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== 梅染街 ==

天国に残雪一片〈1〉(紫亜×和磨)

*同性愛描写(♂×♂)
紫亜君と和磨の話も書きたかったので。
あれ、短編のつもりだったのにちょいと長くなったな…
別々で考えてた屋上ネタとホワイトデーネタ混ぜて一つにした所為です。


屋上から街を見渡すのは随分と久しぶりの気がする。


真昼を此処で過ごす事が日課になって数ヶ月が経つのに、何を今更。
フェンスから一歩下がった地点が踏み込める境界線。
風を受けた髪が乱れるのも構わず、和磨は其処から動げず。

思えば、スケッチの為に足を運んだのは本当に最初だけだった。
それもあの頃は若葉の初夏、今と景色もまるで違う。
桜で染まった隣町は薄紅。
先日の雪と寒さなど跡形も今は無く、陽射しの降り注ぐ青空が暖かい。

そうして視線を足元へ移した瞬間。
目の前が歪んで揺れる錯覚に、力無く座り込んだ。


「……ッ?!」

息を整える間も与えられず背後から巻き付いた黒い腕。
跳ね上がった和磨の肩に顎を載せて、耳元に聞き慣れた含み笑いの微風。
正体ならば、はっきりと目にせずとも判る。


「驚いた?」
「ちょっと、紫亜君、腰が抜けそうになったよ僕……」
「そう?俺は砕く方が得意だけど。」
「……知ってる。」

押し当たっている紫亜のピアスが首筋に冷たくて落ち着かない。
振り向いたら唇が触れそうな至近距離。
身動ぎすらも許されず、和磨には何一つ出来ずに。

紫亜が姿を見せるのは充分に予測出来た筈でも、毎度ながら心臓に悪い。
少し前まで一人きりと云う事が常だった和磨は隙だらけ。
それに、背後で扉の開く音は耳に届かなかった。
最初から驚かせるつもりで気配を殺して近付いたのかもしれないが。


「何だ、俺を待ってたんじゃないのさね?本当に気付かなかったんだ。」
「だって考え事してたんだもん……、あ、ありがと。」

背後から抱き着かれたままで、差し出された紙コップ一つ。
ココアの香りなら先程から気付いていた。
食堂の自販機は遠くても、受け取ってみればまだ温かい。

柔らかなカカオの色には崩れかけた真白が浮いている。
丁度、此の空を流れる雲に似たマシュマロ。


「遅れたけどホワイトデーだし。……で、和磨は俺に何くれるの?」


含んだ一口に噎せ返りそうになったのは熱の所為じゃない。
来年まで聞く事が無いと思っていた単語。

ココアを飲み込んでから言い訳を考える。
最初に断っておくが、決して忘れていた訳じゃない。
つい先日まで雑貨屋でもホワイトデーフェアの客を出迎えていたのだし。
和磨達の場合、一ヶ月前に渡した其の場で相手からも貰った。
だからギブアンドテイクなら済んだ物とばかり思っていた、のに。


「だって……、ほら、僕らバレンタインにチョコ交換したし、」
「何も用意してないって事さねぇ、要するに。」

静かな声と、表情が窺えないのが却って恐ろしい。

手持ちのミントキャンディを渡して場を誤魔化せば良かった。
紫亜には容易く見透かされてしまうだろうけれど。
尤も、思考を巡らせようと何もかも後の祭り。
固まったままの和磨の手から紙コップが軽々と奪われ、床に置かれる。

「やっぱ、没収?」
「いいや……引っ繰り返したら勿体無いから。」


紫亜が行動を起こしたのは、如何云う意味かと考えるよりも早く。
一層強く抱き竦める腕。
今までフェンスに向いていた和磨の視界は上空へ。


思い切り床に打ち付けてしまった背中の痛みに呼吸が乱れる。
急に後ろへ引き倒されたのだ、無理もあるまい。
ああ、確かに紙コップを持っている余裕など今の和磨には無いだろう。
平衡感覚を取り戻した後で理解した。

今から何をされるのか、は兎も角として。



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