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== 交流 ==

氷砂糖は脆い牙のこと(桂+遼二)

縹さんお誕生日おめでとうございます!

***

キャラクター紹介
早未 遼二(ハヤミ リョウジ)/19歳
羊のように柔らかい癖毛に眼鏡、クールで大人っぽいが眠たがり。
製菓学校の一年生。桂君の後輩で時々パンを買いに来る。

保志 拓真(ホシ タクマ)/31歳
クマのように筋骨隆々で頑丈、黒目がちで人の良さそうな顔立ちに薄く顎ひげ。
製菓学校の洋菓子助講師で、桂君とも顔見知り。遼二の恋人。

本家:Noisy Kitchen / 拓真×遼二


授業終了のチャイムで居眠りから覚め、鞄を提げた遼二は教室を後にした。
放課後は時計を気にしながら行動する生徒達で騒がしい。
今日はバイトも無し、電車も急がなくて良いのだ。
幾つもの忙しない背中を見送りながら、欠伸しながら階段を下っていく。

駅へ向かう前、暑いので飲み物でも買いに。
気紛れで裏口の自販機まで来た遼二が眠気の残る目を擦った。

階段に座り込んでいる、見覚えのあるキャラメル色の頭。

「あれ、羽村さん此処に居たんですか?」

「こんにちは」より先にこんな言葉が飛び出す。
驚いた瞳で見上げたのは思った通り、此処の卒業生である桂だった。

それからやっと軽い挨拶。
立ち去るのもあまりに素っ気ないので、遼二も桂の隣へ。
小銭と換えたばかりの缶コーヒーを開けた。


拓真から聞いていたので、桂が来ている事なら知っていた。

現場に立っている先輩の話を聞くのも大事な経験、専門職なら尚更。
そう云う訳で、ちょっとした講演会でOB達が呼ばれる事も時々あった。
ただし、こうした授業は二年生のみ。
一年生の遼二とは顔を合わせないまま帰るかとばかり。
こんな所に居たなんて予想外。


「今はどんな子が居るのかな、と。相変わらず猫多いんだね。」

安心したとばかりに桂が柔らかく笑う。
来る前から用意してきたらしく、手元にはペットフードの小袋。
そうして釣られて出てきた猫が二匹、三匹。

裏庭は業者用の駐車場、そして少し離れたところにゴミ捨て場がある。
餌を求めて野良猫が数匹うろついているのが常だった。

対して、意外にも昔から学校側は猫に大らか。
食べ物を扱うので衛生に厳しいが、校舎さえに入らなければ無干渉。
休み時間には猫と遊んでいる生徒や教師も居るくらいだ。
自販機で飲み物を買って、腰を下ろせば裏庭は猫カフェになる。

甘え上手なら餌をねだったり貰われていったり。
はぐれた仔猫が居れば生徒が里親になり、飼い主の輪が広がる一方。


人に慣れている猫達は、素直に桂の手からペットフードを貪る。
撫でられれば喉を鳴らすサービスまで。
学生時代からやっていたのだろう、何だか懐かしそうな表情。

「羽村さん、そうしていると生徒と変わらないですね。」
「はは……まぁ僕、子供っぽいって言われちゃうからね。」

遼二の言葉で、今度は少しばかり曖昧な笑い方をする。
桂を困らせるつもりではなかったのだが。
女性に「若い」は褒め言葉でも、男性の場合そう受け取るとは限らず。

いつもは桂の店で会うので、赤のスカーフに白いコックコート姿。
そう云えば私服を目にするのは初めてだったか。
今日の彼は可愛いデザインのカジュアル。
明るい色の髪に甘い顔立ちなので、こうした格好がよく似合う。


下手に取り繕うと、却って気まずくなりそうだ。
五歳も上の男性に「可愛い」と言うのも何だか可笑しい。
それならば。

「子供って云うより、羽村さんは犬っぽいですね……何となく。」
「ん、そうかな?」

考えてもみなかった発言らしく、桂が首を傾げた。
勿論、遼二としては良い意味を込めて。
穏やかで懐っこい人柄は家族に愛されて育った犬を思わせる。
口に出すと野暮になるので呑み込んだが。

そこは飽くまでも遼二の主観。
桂の違う面を知る相手からすれば、また他の動物になるかもしれない。


「早未君は……、動物だったら何だろうね?」
「僕は羊でしょうね、名前にも含まれていますし。」

ふわふわした癖毛がウールに似ている遼二が答えた。
早未の「未」は干支であるように羊を意味する。

両親が離婚して、母方の姓になってから既に5年が経過。
その辺りのごたごたまで思い出してしまうのでもう旧姓は忘れたい。
暗い気分になる訳ではない。
感情から湿気は取り除かれて、ただ単に疲れる。

コーヒーに平穏を求めて一口仰いだ。
初夏の外気に晒され、冷たい缶が汗を掻き始める頃。
微糖でも後味の苦い溜息が零れた。


「くまさんはクマしかないよね、うん。」
「蜂蜜もマーマレードも好きですからね、児童書にそんなクマのキャラ居ましたし。」
「ああ、今日くまさんからマーマレードの瓶なら貰ったよ。」
「それも手作りらしいです……、美味しいですよ。」

本当は大量のオレンジを剥く時に遼二も手伝ったのだ。
手作り”らしい”なんて惚けてみせた白々しさに、自分で苦笑する。
桂にマーマレードが渡った事だって知っていた。
講演会が無くても、メロンパンを買うついでで届けに行っていた筈。

そうこうしている間も話題は続いていた。
大柄で顎ひげ、男性的な容姿をしている拓真の場合は誰も異議を唱えまい。
「くまさん」のニックネームは何も名前だけが由来でないのだ。

さて、その流れで次に例える相手は。


「高畠さんは……狼、かな。」

思った通り、桂が挙げたのは共通の知り合いだった。
メロンパンに関して親以外で信頼していると考えられる人物。

ただ、口にした獣までは少し意外。
表面上だけの付き合いなら適当に相槌を打って済ませるところ。
そうでないから、「狼」と聞いた遼二は本音を晒す。


「僕はあまり知りませんけど……、そんなにワイルド系な人でしたっけ?」
「ワイルド系って。」

吹き出した桂が声を震わせる。
言葉の響きが可笑しいくらいチープで。

此れでも遼二は表現をオブラートに包んだつもり。
狼は童話で悪役になりやすい。
登場する際はいつも空腹、か弱い筈の獲物に手酷く返り討ち。
自分が羊の所為か、良くないイメージばかり先走る。

桂はどんなつもりで狼を想ったのか。
つい気になった遼二が訊き返してみると。

「イヌ科っぽいけど懐かない感じだし、群れを嫌う辺りがそうかなって。」

そう言う桂の方だって、特に深い意味は無さそうであった。
イメージだけで連ねてみただけ。
軽く頷いて、遼二もぼんやり思考を巡らせる。


「一匹狼」とは孤高か孤独か分かれるところ。
二つの言葉は似ているようで違う。
少なからず直亮に尊さを感じているのか、寄り添いたいのか。
桂自身は無意識だろうけれど。

どちらにせよ、直亮は満月よりもメロンパンに昂ぶる狼か。
そう思ったら急激に鋭さが和らいだ。

「懐かない」なんて桂は口にするが、それはどうだか。
確実な速度で餌付けされているように思える。
此処の野良猫達よりもある意味従順。
直亮は自分から足しげく通っているのだ、桂の元へと。


「いざ懐いたら狼だって可愛いと思えるんじゃないですかね。」
「まぁ、想像しにくいけどそうかもね。」

彼の事か、本物の獣か。
どちらを指しているのか迷いつつも桂の返事は肯定。
分からないならそれで良い。

尻尾を揺らしながら、腹が膨れた猫は気ままに丸くなる。
犬と羊など放ったらかしで。

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== Comment ==

優しき肉食獣に寄り添うもの
「やぁ、ここは相変わらずだなぁ」

小脇にキャットフードを抱えて、桂は専門学校の裏庭に回った。
見慣れた顔に、新入り。ゴミ捨て場の野良猫たちは、思い思いに寛いでいる。
初夏にしては暑い日で、日陰のアスファルトで涼をとっているのだ。

この日、講演会とディスカッションという名目で、桂は母校に呼ばれた。
OBといえども彼が卒業してまだ一年、そんな若輩者が少々場違いではないのかと恐縮したが、どうやら以前のタウン誌掲載が影響していたらしい。
三代続くベーカリーの若主人ならと、本人の意図せぬ箔がついてしまったようだ。

こんなことが知られれば、また直亮に小言を言われかねないなと苦笑しつつ、ようやく終わった気まずい会合を経て、桂はならばついでとこの場に立ち寄った。

元より、桂は動物が嫌いでは無い。
店舗兼住居の自宅でペットを飼った経験は無いが、腹を空かせた捨て猫に餌を与えたことならばしばしばある。
散歩の途中で立ち寄った客の飼い犬にも、必ず頭を撫でるほど。

だが、この場所の猫達にはちょっとばかり別の思い入れもある。
大学卒業後にこの学校に再入学した桂は、他の学生よりも大分年上。
高校卒業後の進路として専門学校を選んだ者も多いので、周囲は殆どがまだ十代だった。
見た目は童顔だし、性格も気さくな桂が馴染めないというほどではなかったが、それでも時代の流れが急速な昨今。ジェネレーションギャップらしきものだって全く懐かなかったわけではない。

大学のように「漠然とした学生ライフ」を過ごすのではなく、実務を学びに来ているのだしと、彼はそれなりに割り切っていた。
故に寂しいなどとも思わなかったが、年下のクラスメイト達の「ノリ」に若干疲弊するのを感じなかったといえば嘘になる。
そんな時、彼を癒してくれたのはここの猫達だ。

キャットフードを持参した甲斐はあった。
「人にはつかない」と言われる猫も、餌の匂いでおびき寄せられる。
中には感覚で思い出したのか、「よう、久しぶり」と言わんばかりに喉を鳴らして擦り寄るのも。

ひとしきり「挨拶」をしたら立ち去ろうとした桂だったが、不意にかけられた声でもう暫く足止めされることになった。

「あれ、羽村さんここに居たんですか?」

声の主はすっかり「ベーカリー羽村」の常連客となった、年若い後輩。
ふわふわの天然パーマと、端正ながらもどこか眠たげな面が特徴の。

「あー、早未君…」
在校生なのは承知していても、顔を合わせる予定の無かった知り合いの登場に桂はいささか驚く。
講演とディスカッションに参加していたのは二年生。一年生である遼二には関わりの無い行事だ。

軽く会釈しあったが、そのまま立ち去るのはそっけないと遼二は感じたようで。
桂の横に並び、手にした缶コーヒーに口を付けた。

世話になった講師の琢磨を通じて知り合った彼だが、今では一人でも数駅先のパン屋まで足を運んでくれる。直亮同様メロンパンが目当て。
地元でのパイオニア的存在には違いないが、「ベーカリー羽村」のメロンパンも主人同様、作り手の知らぬ間に看板メニューとして確立してしまったらしい。

とはいえ、一時の情報に流されたというだけでわざわざ買いに来るタイプではこの後輩はないと、徐々に桂も判ってきた。
敢えてそうしているのか天性か、遼二は人に媚びるのが苦手に見える。
しかも親しくなればなるほどに。


「羽村さんは犬っぽいですね、何となく」
だから不意に言われたその言葉にも、桂は首を傾げた。
桂にしてみれば、自分が犬とは予想外だ。
犬も大型小型で性格が大きく違うので一概には言えないが。
親しみやすいとか従順とか忠実とか、どれを取るにしても桂本人にしてみると買い被りすぎではと思う。

早未君は、と聞けば、遼二は自分は羊だと応えた。
口には出さなかったが、桂は自分もそっちじゃないか、と考える。
但し、おそらく遼二とは違うタイプの「羊」。

遼二は謂わば、「ストレイシープ」なのではないだろうかと桂は漠然と思っている。
気が付くと群れから離れ、森を彷徨う迷える子羊。
彼が出逢ったのは、肉食のくせに童謡よろしく逃げろと言ってみたり落とし物を届けに来たりする心優しき熊か。
二人の関係には気付いていない桂だが、何故かそんな場面が思い浮かんで口端を上げた。

比べて桂の方はといえば。
群れの真ん中にいて、迷いもしない。羊飼いに追われた通りの、決められた道を往く。
集団に埋もれ、自意識さえ忘れ、毎日同じ様に過ごし…。


「高畠さんは狼、かな」

何故そう思ったのか、口にした桂にもよくわからない。
群れない、媚びない、懐かない。かといって猫科の猛獣のように気紛れでもない。
不器用で、突っ走るだけの狼…そんな印象は確かにある。が。

毎日同じ場所に追われ、牧草を食む羊の群れの平穏が一変するのは「狼が襲ってきたとき」だ。
集団で固まっていようとも、その時ばかりは羊飼いの先導を無視して、羊たちは散り散りになるだろう。たとえ、中央でぬくぬくしていようとも。

襲いかかった狼の目的が、羊そのものの肉ではなかったのだとしたら。
否、食物を求めたはずが事情が変わってしまったとしたら。

直亮を狼に例えて、桂の脳裏に浮かんだのは少し昔に流行した絵本の狼だった。
自分を食べるはずの狼と友情を結んでしまったのは、羊ではなく山羊だったけれど。


キャットフードが綺麗さっぱりなくなった掌を、桂は軽く叩いて立ち上がった。
「…じゃ、僕はそろそろ帰るね」
「また、近いうちに伺います。羽村さんの顔見たら、メロンパンが食べたくなりました」
社交辞令ではなく、本音だろう。それを裏付ける平坦な口調に、桂は微笑んだ。
「うん、お待ちしてます」

迷える羊は、熊と出逢って道筋を見いだせたのか。
狼と群れの羊は、勘違いでも友情を育めるのか。
そんなのはなるようにしかならないよと、腹の膨れた猫たちは思い思いの場所へ散る。

「くまさんにもよろしくね。マーマレード、御馳走様、って」
改めて添えられた一言に、遼二は少しだけ目を瞠り、頷いた。

どうなるかなんてわからない。それでも、別れ際見た遼二の微笑は年相応に愛らしいと、桂は感じた。

****

誕生日を覚えて頂くだけでも有難いのに、またまた桂と絡んだお話をありがとうございました!(*´∀`*)

「直亮が狼」というのは漠然としたイメージでしたが、そういやメロンパンって満月みたいだわ、と気付いて、イメージが出来ましたw
「あらしのよるに」は大分忘れかけてたんですが、狼そのものより多分ガブのが近いですねw

いつもありがとうございます!





        
 
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