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== 梅染街 ==

恋するドロシー(楔波×和磨×紫亜)

バイト先の雑貨屋で絵本を見かけたのは偶然だった。
視界に映った瞬間、和磨の心臓を跳ねさせた犯人。

なんて云っても運命的なものなど何も無し。
何処の書店や図書館でも置いてある。
あまり大きくない本売り場、童話コーナーに例の一冊。

表紙には少女と三人のお供。
此れは和磨にとって、ちょっとした思い入れのある本だった。


「オズの国」に飛ばされた少女ドロシーが家へ帰るまでの旅物語。
途中でお供になるのは賢くなりたい案山子、心の無いブリキ、臆病なライオン。
一行はそれぞれ願いを叶えて貰う為、大魔法使いのオズに会いに行く。

名作「オズの魔法使い」、タイトルだけは一度は誰でも耳にする。


和磨の中で最初に呼び起こされるのは、幼い頃に人形劇を観た記憶。
もう10年以上前の昔々。
すっかり色褪せてセピアになってしまっているけれど。

それよりも心音の理由はもっと鮮明な思い出。
中学生の頃に読書感想画で此の本を選んだ事があったのだ。
描いた絵も憶えているが、それは置いといて。
図書室で探していた時に司書と交わした言葉が、今になって刺さった。

「心が無い人に惹かれたりしない。」

そう口にした時の和磨は知らなかった。
自分達には感情など無いと、世にも冷たい双子を。
今となっては誰よりも愛しい存在。


表情を変えない楔波と、笑っても残酷な紫亜。
心が無かった彼らはさしずめブリキか。

頭の中だけで捲ったページ、配役は妥当だと和磨は思う。
願い事は旅を通して手に入る。
彼らの場合は望んでいた訳でなかったが、確かに育った。
感情とはそう云うものなのだ。


ブリキの心は、異世界から来た少女によって芽生える。
双子にとってのドロシーは和磨。
自惚れ半分かもしれないが、覆らない事実だった。


双子は和磨と触れ合っている時に感情を見せる。
ふとした時に笑い、他者と話すと嫉妬して、此方が慌てると楽しそうに。
涙だけ知らないし想像も出来ないが、別に良い。
彼らの分だけ泣く役目を負っているようなものなのだ。

「心が欲しい」と口にするとしたら、そう云う意味。
和磨の変化を愉しみたいと。

骨張った大きな手と、マニキュアで艶めく細い手。
それはどちらもブリキの体温。
冷たいからこそ熱に惹かれ、和磨から奪っていく。

欲しくなったら場所や人目を気にしない相手。
昼夜問わず絡み付いてきては、薄い肌を噛んだり細い爪痕。
時には首輪で拘束してまで。
所有物の証を見せ付けて、自分達が主人だと刻み込む。


童話のラストシーン、ドロシーは仲間と別れて元の世界へ帰る。
和磨もいつか離れるとでも思っているのか。


「……はぁ……」

家でも学校でも一緒。
唯一、バイト中の今だけが二人から離れている時間なのに。
ふとした瞬間に思い出して和磨は溜息を吐いた。
くすぶる火照りで、湿った声。

何処か苦しげな響きを伴って。
今は首輪で締められてなどいないのに。



そうして今日も労働の終わり。
制服のエプロンを脱いで鞄を提げたら、空には夕闇が迫る頃。
城にも似たマンションを目指して和磨一人。

ちょっとした気紛れで、ハート形のチョコレートを買ってみた。
バレンタインフェアの売れ残り。
当日にきちんと贈り物は交わしたが、双子への手土産。
好みを考えて楔波にビター、紫亜にストロベリー。

今まで"腹に入れば何でも良い"と云う姿勢だった。
甘い物をあまり口にしなかった彼らの為を思っても、それは無駄でない。

そもそもバレンタインすらよく理解してなかった相手だ。
チョコレートの美味さも和磨が教えた事の一つ。
喜んでくれるのは分かっているから、渡す時を思うと口許が綻ぶ。


首輪も無ければ、鎖で繋がれている訳でもなく。

それでも少年ドロシーは真っ直ぐに足を進める。
愛しいブリキが居るなら何処へでも。
独りきりを忘れて、もう元の世界には帰れやしない。




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