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Drown Moon(ベルナドット×セラス)

古いディスク整頓中に発掘した作品です、夜学生と女教師パラレル。
このまま消すのも勿体ないからアップします。
学生時代に書いた物なので恥ずかしいから推敲してません…!
読みにくい点もあるかもしれませんが、ご了承下さいませ。


昼から上がる一方だった気温は、夜を迎えてすっかり過ごしやすくなった。
とは言え、クーラーの効いた職員室から出ると廊下の空気がブラウスにまとわりつく。
窓の鍵を確認すると何となく息苦しくなって、セラスはボタンを一つ開けた。

夜学もある、なので先生も数人居るし、体育館だってまだ明るい。
それは分かっているのだが。

暗くなった古い校舎、というものはそれなりに凄みがあるもので。
帰りが遅くなることなんていい加減に慣れてきても良さそうだが、怖いものは怖い。
自分で閉めたロッカーの音すらもセラスの耳には鋭く響き、職員用の玄関を足早に出た。
外は夜色、光と言えばぽつぽつと並んだ白い灯り、それから高くなった月。

静寂の中、水音が聴こえたのはその時。


「……っ……?!」

悲鳴も引きつってセラスは肩を大きく跳ね上げる。
恐る恐る、音の方へ首を向けてみると、


「………何やってんですか?」

小高いコンクリートの上、ぐるりと囲まれたフェンスの向こう側。

プールの縁へ腰掛け、膝の辺りまで引き上げたカーゴパンツ。
汚れた靴は脱ぎ捨てられて。
授業を受け持ってるだけにセラスもよく知っている夜学生、ベルナドットが居た。

剥き出しになった脚を水の中に浸し、のんびりと行水の真っ最中。

こちらに気付き、向こうも呑気に片手を上げてみせる。

「や、先生。」
「もー……、脅かさないで下さいよ……」

影の正体を見受けて小さく一息、呆れ半分といったところで、ようやく声を絞り出す。

「って……ダメじゃないですか!勝手に入ったりして!!」
「あー、はいはい、もう少しだけな。」

叱っても、完全にタイミングの遅れた言葉なんて効果は低い。
それにしたって、どうやって?
入り口にはきっちりと鍵が掛かっていた筈。

「うちの学校フェンス低いからさー、」
「……登ったんですね?」

つまさきで高く水面を跳ね上げてみせたのは、たぶん肯定。

「夜学じゃ出来ねぇこと結構あんだよ、プールとか。」


そりゃあ今日も暑かったし気持ちは分からないでもない、けど、

ちらりとプールに目をやって、セラスはやや眉根を寄せた。
陽射しの中で輝いていた青は闇に塗り潰され、底など見えそうもなく。
何か潜んでいそうな感じすらする。
風は弱いのに揺らめいているのは、ベルナドットが打たせたからだけだろうか。

「…よく入れますね。」
「何で?」
「だって何か不気味じゃないですかー……真っ暗だし、誰も居ないし、」
「先生、来ただろ?」

それって遠回しにナメられてる?
再びきつくなったセラスの目線は、今度はベルナドットの方に。

ベルナドット本人としては違う意味で言ったのだけれど。
言葉の裏側に気付いてくれるほど、このお嬢さんは鋭くない。
まあ、いいけどさ。
ひとしきり苦笑いするとフェンスのすぐ下を指差した。
コンクリートの壁に凭れるように山積みになっている、古紙の束。

「ちょっと、そこ乗ってみ?」
「え?」
「いーから、」

訝しみながらも、言われるまま近付いてしまうのは彼女らしいところですが。
右の足を置いてみて、大丈夫なことを確認してからもう片方も。
もとよりあまり高くないフェンスは、今は胸の下まで。

その向かいに台を置いて、上から腕を伸ばして、
ベルナドットは、


「ひゃ……っ!?」

「あー、いけそう……暴れんなよ?」


身を乗り出してセラスを抱き上げ、パンプスが宙に浮かぶ。


どの位置で支えればいいのやらと徐々に手は下がっていく。
しばらく彷徨って、やっと安定したのは腰を抱くような態勢。
持ち上げられた華奢な身体は、あっけなくもフェンスを乗り越えてしまった。

「これで共犯。」

憮然と睨みつけてもベルナドットは笑うばかり。
抗議したところで彼に口先で勝てた試しはなく、途中で溜息に変わる。

タイルの上へ降り立ったパンプスの足音は思いのほか大きい。
慌てて脱いだそれを片手に、一歩踏み出してみる。
薄いストッキングの足に感じる夜のプールサイドは、微かに冷えていた。
フェンス越しでは不気味だった水面の月は、今なら少し気持ち良さそうに見える。

「折角だから先生も入んねぇ?」

ベルナドットは再び縁へと腰を下ろして、バタ足で舞い上げてみせる月の粒。

「ダメですよー、私ストッキングだもん。」
「脱げば?」

その提案は聞き流すことにして、膝を閉じ、一定の距離を開けてセラスも隣に。
カルキの気配が濃くなった空気をそっと吸い込むと、夏の匂いが鼻先をくすぐった。
覗き込んでみたプールはやっぱり暗い。
セラスに底を見せようとはせずに、ただ揺らめいている。
しかし水面から白い手でも出てくる訳がなく。

「落ちるなよ?」
「落ちませんって。」

諌めるような言葉に対して、知らずのうちに反発めいた口調になる。
タイトスカートの裾が少しずり上がるものの、
片手を縁に着き、もう一方の手をセラスはプールへ差し入れた。

ひんやりとした水の中で、指先がきゅっとなるような感覚。
生ぬるさが残る夜、静かな水の温度は汗ばんだ身体に染み込んでいく。

いつも暑い日中は校舎内。
教室と職員室を行ったり来たりする毎日なので、外でのこんなひとときは新鮮だった。
もし見つかったら――などと片隅で心配して月色の髪を溜息で吹き上げる。
罪悪感の中に混じる、判らない別の何かを考えながら。
拭ってしまうのは何となく惜しい気がして、濡れた手は軽く払うだけにした。


ちょん、と何かが指先をつつくように触れる。
振り返ってみれば、ベルナドットの手が突き出したジュースの缶。
冷えている。

「大ー丈夫、アルコールなんて入ってねぇから。」
「……本っ当に、今日だけですからね?」




反対側のフェンスの向こう、幾つもの木の陰になって中は見えない、細い道。


夜のプールからの水音やら人の声やらは、部活で遅くなった学生を早足にさせたとか。
翌日、噂は時に尾ひれをつけて流れたものだったが、当人達の知ったことではない。

プールは堅く口をつぐんだままで、今夜も月を揺らすだけ。
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