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== 梅染街 ==

夜更かしミントパフェ(楔波×和磨)

*性描写(♂×♂)

真冬の空は一足早く夜の帳が下りる。
一度呑み込まれたら、針が時を刻むごとに闇は深く深く。
天辺に近くなる頃には点々とした灯りを残すのみ。

昼ですら喧騒から遠いマンションの最上階は静寂に包まれる。
ただ、全くの無音でもない。
マウスとキーボードを弾く軽快な指先。
ノートパソコンの前、熱心に画面を見詰めているのは和磨。


積極的に楽しみを見つけ、関心を持った事には深く嵌り込む。
趣味が多い和磨はパソコンを開くと忙しい。
陣取ったテーブルの上、湯気を立てる桃色のカップをお供に。

オンラインで絵師の顔を持っているし、他にも楽しみは尽きず。
特に動画サイトは時間泥棒。
ヘッドホンで周囲を遮断すると、すっかり自分の世界になる。
部屋の空気に触れないまま直に頭へ伝わる物語。
熱中すれば夜は矢のように更けていく。

とは云え平日、長い学校も雑貨屋のバイトも終えた後なのだ。
少し疲れが出てきた頃なので瞼は決して軽くない。

部屋着のポケットに片手を伸ばし、布の中に固くて冷たい感触。
探し当てた小さな缶を開けると清々しい香り。
口に放った白いキャンディの粒は、舌の上で氷塊を錯覚させる。
ほとんど甘くないミントを眠気覚ましに、動画を目で追う。


「……和磨。」


耳へ流れ込む台詞に負けず、背後からの低音は届いた。
飽くまで静かな楔波の呼び声。
肩を叩くどころか、和磨にとっては心臓を跳ねさせる。

「え……っ、あの、何?」

それにしても何の用だか。
振り向くのが怖い、ホラー映画を観ていた訳でもないのに。

動揺を呑んでヘッドホンを外そうとしても、それは叶わなかった。
和磨よりも早く絡み付く骨張った手。
強引に奪われ、髪と耳朶を体温の低い指が撫でる。

丁度見せ場のところだが続きは明日か。
相変わらず楔波は無自覚だが、和磨が自分だけを見るように仕向ける。
ちょっかいを出すのが片割れの紫亜でも。
大人しく中断を決める事にして、二つ三つの操作で画面が眠りに就く。


向き直れば、和磨の掛けているソファーを挟んで金色の眼。
待ち構えるように背凭れに肘を付いて。
そして初めて気付いた、其の手にはチョコレートの小箱。

「チョコやる日、なんやろ?騒がしいから先にやる。」

知らないうちに日付は変わって14日。
渡された瞬間、チョコレートはバレンタインの贈り物になる。
今気付かされた事の二つ目。


「え?えっと……あ、ありがと……」
「何や、大して嬉しくなさそうやな。」
「ちょ、やだ、そうじゃないよ!ただ、吃驚したって云うか……」
「年間行事はお前の方がよぉ知っとるやろ、驚く事なんか?」

確かにイベントのたび慌しいのは和磨の方。
バイト先が雑貨屋とカフェなので、商売柄の事もあるが。
最近はどちらでもバレンタインフェアでチョコレートに囲まれた生活。
女性達に売り捌く毎日だった為、貰える側だとは忘れ掛けていた。

三人にとっても、バレンタインは少し特別な日。
楽しい事が好きな紫亜に決められた。
和磨に逢うまで興味無く過ごしてきた楔波は飽くまで付き合いだが。

だと云うのに、不意打ちで贈るなんて狡い。
気紛れな楔波の行動なんていつだって読めやしないのだ。


視線を落とすと、改めて和磨は手元の箱を眺めた。
バレンタインコーナーに置いているような凝った物にあらず。
そもそもラッピングが必要な類ではない。
何処のコンビニですら手に入る、見慣れたビターチョコレート。

確かな重みを軽く握り締めて、静かに響く喜びは口許を緩ませる。
和磨の為に選んだ事、貰えた事。
昔から知っているパッケージが今は少しだけ眩しいくらい。


かと思えば、再び楔波の手が伸びたのは突然。
理由を訊ねる前に箱は乱雑に破かれて。

「……食うならさっさとしぃや、和磨。」

ささくれた指先に摘まれた、艶々の暗褐色。
チョコレートの破片が唇に刺さる。
まるで鍵を挿すように、早く開けと迫って。

そうなれば固く閉ざすなど出来る訳が無い。
柔らかな体温で溶け出すより前、口腔に引き入れたのは諦念。

チョコレートと一緒に相手を味わう事を意味する。



背凭れに正面から寄り掛かり、和磨の膝がクッションに沈む。
ソファー越しに重ねる唇が熱を帯び始めた。

舌の上で小さくなっていたミントは転がって楔波の方へ。
奥歯に砕かれた音が耳に届いて、和磨は頬が熱くなる。
自分の一部が食われたかのような羞恥。

糸を引いた楔波の唇が、意地悪く歪む。
何処か紫亜を思わせる笑み。

ミントが無くなっても和磨は寂しくない。
ずっと清涼感で一杯だった口腔に、割られたチョコレート。
歯を立てずにいたのでただ溶け合うのみ。
苦味が利く同士にも関わらず、妙な甘ったるさを残す。

双子は食欲と色情が混線している気がする。
面と向かって訊いた訳ではないが、彼らについて思う事の一つ。

何を口にしてもあまり変わらないのに、和磨の事だけは「美味い」と言うのだ。
噛み千切らない程度に歯型を刻み、汗や涙を蜜だと味わう。
最中に甘い物を使って遊ぶのも一環かもしれない。


ソファーを越えようとせずに、楔波は白い肌に腕だけ伸ばす。
優しくなくとも血を沸き立たせて朱色に染まる。
その気になれば跨げる境界線を隔てたまま、冷徹を保って。

固い指の動きは愛でるだけでない。
先程まで和磨が背を向けていたパソコンに、顎を固定する。

「えぇ……っ?あ、やだ、ちょっと……!」

真っ暗な画面は鏡になる。
映し出された痴態、溶けていた和磨の表情に狼狽が混ざる。

目を閉じようとしても、強く噛まれた肩の痛みに涙が滲む。
加虐心にしては随分と激しい。

若しかして、此れはお仕置きなのではないか。
楔波から不機嫌の匂いを感じ取って思う。
心当たりが無いので断定は出来ないものの、可能性として。


「楔波、何か怒ってない……?」
「……一人で笑ってたりすんなや、イイ顔するなら俺に見せろ。」

耳元の冷たい低音と、画面越しに突き刺してくる視線。
一瞬で痺れが全身を貫く。
恐ろしさにもよく似た、凶暴な情欲。


全てに無関心だった楔波は和磨と交わるうちに変わっていった。
そうして芽生えた物の一つ、嫉妬は意外な程に深く。
時にはパソコンすら対象になる。
それこそ荒っぽい方法でも緑の眼を欲しがるのだ、いつも。

「僕は、楔波の物だよ?」

だから、もっと求めて。
離さないで欲しいと願っている。

楔波の手を解くと、愛しい金色の眼を真っ向から見据えた。
キスを強請れば必ず応えてくれる。
絡み合った吐息は、ミントとチョコレート。



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