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砂糖は黒い湖底に(桂+遼二)

縹さんお誕生日おめでとうございます!
今年は桂君と遼二でお話書かせていただきました(´ω`*)

***

キャラクター紹介
早未 遼二(ハヤミ リョウジ)/19歳
羊のように柔らかい癖毛に眼鏡、クールで大人っぽいが眠たがり。
製菓学校の一年生。桂君の後輩で時々パンを買いに来る。

保志 拓真(ホシ タクマ)/31歳
クマのように筋骨隆々で頑丈、黒目がちで人の良さそうな顔立ちに薄く顎ひげ。
製菓学校の洋菓子助講師で、桂君とも顔見知り。遼二の恋人。

本家:Noisy Kitchen / 拓真×遼二



まだ明るい空の下、雲に隠れ始めた太陽を遼二は軽く睨んだ。
もっと早くしてくれたら陽射しに茹だらず済んだのに。
駅から日陰を選びながら歩いていた道中の事。

一人でも何度か通ったもので此処の街並みも見慣れてきた。
電車に乗って、ちょっとそこまで。
やや大仰だが何の事はない、商店街のベーカリーに行くだけ。
明日の昼飯はお気に入りのメロンパン。

すぐ固くなってしまうパンは買い溜め出来ないのが残念。
食べたくなったら、毎回こうして遠出しなくては。

「また上がってきなよ。」

レジでパンの袋を抱えたところで、店主に呼び止められた。
帰りを急ぐ訳でもないし遠慮は却って失礼か。
お言葉に甘えて、もう少しだけ長居を決め込んだ。



湯気の立つカップを傍らに、こうして向き合うのも二度目。
以前は4人だったもので空席が妙な感じでも。

手土産はいつも黒い紙袋のバナナシフォンケーキ。
最初からお茶をご馳走になるつもりではなかったのだけど。
泡を思わせる口溶けの生地に、蜂蜜を一匙。
コーヒーともよく合う甘さなので幾らでも食べられてしまう。


「遼二君ってさ、いつかは自分のお店とか持ちたい?」

ケーキを頬張っていた手が止まる。
落ち着いて呑み込んでも、返答までに頭を捻ってしまう。

さて、どうしたものか。

キャラメルを思わせる甘い髪色はコックコートの白に映える。
赤いスカーフが引き締めて洒落た印象。
幼さの残る顔立ちに、口調も雰囲気も相変わらず穏やか。
ベーカリーの若き店主の名は、桂と云った。

ケーキ屋のバイトこそ3年目でも、製菓学校ではまだ数ヶ月。
遼二が桂の前で将来を語るのはどうも青臭い気がした。
最初から返答は「否」で決まっていても。

「いえ……、卒業したらバイトから正社員になりたいですね。」
「今のところで決めちゃって良いの?」
「僕はうちのシフォンケーキ好きなので、此の先も力になりたいんです。」
「そっか、ちゃんと考えてるんだね。」

手短でも桂は納得したらしい。
頷いてカップに口付けると、コーヒーが香り立つ。


こうも柔らかに微笑まれると良心が咎めないでもない。
耳障りの良い言葉は遼二にとって嘘じゃなかった、それは確か。
ただし、理由の半分以上に現実的な本音も。

近年チェーン店を増やした「Miss.Mary」は着々と拡大している。
安定した組織で腰を落ち着ける方を選びたいだけ。
何より駅ビル店は客入りも居心地も良い。
今更、此処を辞めて他の店から出発するなど面倒。

もし、純粋愚直なまでにパティシエを目指している身だったら。
きっと目を輝かせて熱弁を振るっていただろう。

冷めすぎている遼二はそうしない。
紳士的で通っている彼も、一皮剥けば腹は真っ黒。
勿論、製菓が好きだから自分で望んだ事に変わりなくても。


「いや、急に訊いたりしてごめんね。困らせるつもりじゃなかったんだけど。」

やや申し訳なさげに付け足されて、遼二も首を横に。
唐突な質問なようでも、製菓学校生なら一度くらい考える事。
資格を手に入れたら店を構える事も出来るのだ。

「親の店継ぐ子は同級生にも居たけど、他の子はどうなのかなって。」
「あぁ、僕のクラスにも居ますね……」

桂のように"家業の為"と云う生徒は偶に紛れている。
興味本位で入学しただけで、授業を抜け出してばかりの者も居る中で。
最初から責任を背負っての学校生活。

「就職活動は大変でも、将来が決まっているのもそれはそれで……ですか。」
「うーん……、その話ばっかりになっちゃうんだけどね……」

今度は桂が軽く頭を抱える番。
先日のお茶会でも直亮に叱咤されていたばかり。
生きる上での悩みは尽きない。
「お疲れ様」とでも声を掛けたいところだが、目上には失礼か。


「料理は愛情」なんて使い古された言葉は綺麗事。
パンやお菓子は化学変化の結果なのだ。
正しく分量や条件を揃え、実験が成功すれば美味い物が出来る。

以上は、何も遼二が御託を並べている訳じゃない。
戦後間も無い頃から最近まで活躍してきた老年講師の発言である。
火傷で何度も手の皮を剥いてきた、云わば歴戦の戦士。
切り捨てるようだが、説得力が全く違うのだ。

先輩の桂も授業で聞いただろうか。

パン、洋菓子、和菓子、どの道を目指そうと学校も資格も同じ。
そして製菓学校は調理よりも数が少ない。
県外からの生徒も珍しくないのだ、此処らの職人は大抵母校が一緒。
狭い業界なので意外と繋がりがある。

だからこそ、遼二も桂と縁が出来た訳だ。
今日買い込んだメロンパンとも。
三代目が居なければ出会えなかった味。


「少なくとも、僕が美味しいパン食べられるのは羽村さんのお陰ですけどね。」
「あ、ありがと……」

パンだったら何でも良いのなら近所の店に幾らでもある。
電車に乗ってまで此処に来たのだ。
わざわざお世辞を言う為にそこまでするものか、紛れも無い本音。

小さく礼を述べて、やっと少しだけ桂が笑った。
見届けた後で遼二もカップに手を掛ける。

降り注いだスティックシュガーは溶けた頃だろうか。
まだ熱くても深い苦味を和らげて、先程よりは舌に優しく。
呑み込むにはそれくらいで丁度良い。
生温くなって甘ったるいだけが延々続くなんて、きっと退屈。



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== Comment ==

金色シロップを隠して
雨が近づいているのだろうか。
窓から入り込む日差しは淡くなったが、築数十年の店舗兼自宅には、やや蒸し暑い空気が充満していた。
まだ出したばかりの扇風機のスイッチを入れる。
微風を送りながらゆるゆると首を振る様に僅かに目を遣ってから、再び桂は遼二の顔に視線を戻した。

「………でも、さ。まさかそんなに気に入ってくれるなんて思わなかったよ」
苦笑交じりだが、桂にしてみれば本気も本気。

最初に相手が訪れたのは、自分も世話になった製菓学校の講師助手と一緒に。
そちらは自分を知っているから、御無沙汰も手伝って顔を見に来たのだろう。
その時の彼は、助手のただの「連れ」だった。
助手…保志が、何故たった一人の学生を引き連れてきたのか、未だ桂は気付いていない。
親密そうだな、と思いはしても。

そもそも保志は、桂が通学していた頃から随分と学生に馴れ馴れしくされていた。
大きな体格の割に穏やかな…少し揶揄してしまうと若干気弱そうで押され気味の彼は、男子学生より専ら元気の良い女子生徒によく絡まれていた記憶がある。
まるで落としたイヤリングを届けたら、バンバン肩を叩かれて礼を言われる「森のくまさん」だ。
実際保志は、「琢磨」という名からか「くまさん」の愛称で呼ばれていた。

そんな保志が、このクールな口振りの後輩とつるんでいるのは少々アンバランスな気もする。
眼鏡の奥にあるのは眠たげな垂れ目だが、遼二はなかなかの「イケメン」である。
整った顔に目を奪われる女性もいるだろう。

…つまり、どちらも「女性連れで来るならなんとなくわかる」のだが。

彼等が初めてここに来た日、偶々直亮もその場に居た。
二人を見送った後、直亮にそんな印象をぽつりと零すと
「お前はほんっとに鈍いな」と毒づかれただけだった。
「他人様の関係なんて色々あんだよ。んなこと詮索する前に、自分の腕を上げろ」
詮索したつもりは無いが、余計な説教を喰らってしまったので桂もそのまま黙った。

それにしても。
この綺麗な顔した後輩は、その後も「ベーカリー羽村」に一人でも来てくれる。

「メロンパンなら、他にも美味しいお店いっぱいあるでしょ?」
「ここのが気に入ったんですよ」
何の含みも感じられない、さらっとした調子で返されると、桂は返答に詰まった。
接客業のバイトをしているらしいのでお愛想くらいは言えるだろうが、そんな雰囲気は微塵も無い。
それが、更に桂を萎縮させる。

保志と遼二がここを知ったのは、フリーペーパーが切欠だった。
その掲載記事に関しても、直亮には散々ケチを付けられたのだ。
「先代ならわかるけど、お前が紹介されるなんて十年早ぇ」と。

「そういえば、さ。あのフリーペーパーの記事…また高畠さんが関わったのかと思ったんだ」
「また?」
「以前…観光雑誌にね、小さな記事を載せて貰ったんだ。まだ父がパンを焼いてた頃。それは高畠さんが口添えしたらしくてさ」

元々、メロンパンは特に「ベーカリー羽村」の主力商品というわけではなかったのだ。
戦後、運良く無傷で復員できた桂の祖父は、貧しく腹を空かせた子供らが「笑顔になるような菓子パンを作りたい」と、わざわざ神戸まで赴いて老舗のパン屋で修行を重ねた。
関西で「サンライズ」という名前で販売されていたメロンパンの原型を祖父は非常に気に入り、故郷に戻ってこの店を開業したとき、自らの工夫も取り入れ販売した。
当時はやはり「サンライズ」という名だったようだが、それがいつ頃「メロンパン」に変わったのかはわからない。
が、少なくともこの辺りの地域では草分け的存在のひとつ、と言って良いだろう。

そのことを持ち上げられ、小さいながらも雑誌の紹介枠を得た。
…そう、桂は思っていたし、事実あながち間違いでも無い。
とはいえ何の変哲も無い商店街の一パン屋に目を留められたのは、直亮が「ベーカリー羽村」はちょっとした老舗だと、知り合いの編集者にぼそりと洩らしたためである。
本人曰くちょっとした雑談の話題だったらしいが、編集者はまんまと食いついた、というわけだ。

だが今回のフリーペーパーは、おそらく発行元がその雑誌記事を覚えていたというだけの流れだろう。
特定地域にしか配布されないものだし、穴を塞ぐ苦し紛れのものだったのかもしれない。
それでも久しぶりの「取材」と、息子が跡を継いだことを知らしめられると喜んだ母親のふくよかな笑顔とは裏腹に、ややぎこちない表情で写った桂の写真に添えられた、「三代目に受け継がれる、昔ながらの絶品メロンパン」などというコピー。
…直亮が苦虫を噛みつぶしたような表情で一瞥したのは無理からぬことで。

「…随分厳しい事言ってましたよね、高畠さん。あの人何様なんですか?」
遼二の言い様に桂は苦笑する。
「多分…ね。僕よりも、「ベーカリー羽村」の味を知ってる人」
桂のその言葉に、垂れ目の後輩は眼鏡の奥の瞳を微かに見開いた。

「信頼してるんですね…意外と」
「どうだろう。でもね、高畠さん、口は悪いけど的外れに人を叩いたりはしないんだ。散々酷評はするけど、相変わらずまめに僕の作ったメロンパン買いに来るし」
「…おばさんに頼まれた、とか言ってましたよね?」
「それもあるけど…かなり本気で、父が作ってたメロンパン…というか、祖父が作りたいと思っていたメロンパンに思い入れがあるんじゃ無いかと思う。僕よりも、祖父の心に近いのかもね」
遼二が草食動物にも似た仕草で、首を傾げる。きっとよく理解出来ないのだろう。当然だ、そう口にした桂だって「なんとなく」という程度なのだから。

料理に「愛情」を含めた感情は関係無い…専門学校ではそう教わった。
しかし、ここのパンには確かに祖父の、父の想いが「存在」し、自覚の程はわからないがそれを確かに感じ取っている直亮が居る。
嫡男の自分が一番彼等の想いを理解していなければならないのに、それが出来ていないから、ことさら直亮を苛立たせるのだ、おそらく。

そしてこの後輩も…。
わざわざ一人で、電車を乗り継いでここまで買いに来てくれた。
学校で教わった理論は同じだろうから、遼二に感傷などないとは思う。
だが直亮同様、祖父のレシピを気に入ってくれたことにはなるのだろう。
桂にとってそれは、申し訳無くもやはり有難い。

「…そろそろお暇します」
遼二が腰を上げた。
「あ…うん、お構いしませんで。シフォンケーキ、ありがとね」
「いえ…今度よかったら店の方にも来て下さい」
社交辞令のようでいて、どこかそっけない響きもある。
そのくせ愛想で飾らない分、本心であるように思えるのだ。

腕に抱えた紙袋には、メロンパンが五つ。
「三食メロンパンでも構わない」と豪語する直亮ではあるまいし、細身の後輩が一人で食べるには多すぎるだろう。
学校の友人と分け合うのか、それとも…

「…くまさんへの手土産、かな」
帰路に就く相手の後ろ姿を見送りながら、桂は口の中で呟く。
ふと頭を過ぎった考えだが、それが正解な気がした。

直亮の心の裡を桂が知るのは、ここからもう少し先の話。
準じて保志と遼二の関係を彼が理解するにも、もう暫く時間の経過が必要だった。

メロンパンもシフォンケーキも、たっぷりクリームやフルーツの盛られた豪奢なスイーツでは無い。
一見地味な見た目には、けれどほっと一息吐かせる、優しいエッセンスが隠されている。

****
朔花さんお誕生日おめでとうございますw←

ほんとはすぐに返そうと書き始めたんですが、結局バースデー返しになりましたww
遼二くん大好きなので、この関係楽しいです(*´∀`*)
またいつか絡みましょうww
水色の棘と、網目の月と
繋がり薄くなってしまいましたが、サイトで続き書かせていただきました!
「URL」のところから読めるようになってます。

縹さんこのたびはありがとうございました!





        
 
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