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== 梅染街 ==

固結びの銀〈1〉(楔波×和磨×紫亜)

季節ものも書いておきたいので夏祭りの話を。
ネタは前々から考えてたり桜桃さんにいただいたので纏めてみました。



じりじり肌を焦がす真昼の熱も、やっと終わりを迎えた。
太陽が落ちてまだ少し明るい藍色の空。
雲の居座る梅雨が過ぎ去り、煌々とした光を取り戻した月も。
今日ばかりは日暮れからが本番、長い夜の始まり。

「和磨、はぐれんなよ。」

人波に浚われそうになる寸前で手を引かれて引き戻される。
屋台が並ぶ中、喧騒を掻き分けるサンダル履きの足が揃って三つ。
双子と一緒の祭りも二度目。


ほとんど飲み食いに来ただけで、すぐ会場を後にしたのは去年の話。
今年はきちんと甚平を纏って形から愉しむ姿勢。
三者三様で漆黒、紫紺、浅葱。
女性物よりデザインが少ないながらも、それぞれ似合う色を選び取った結果。

丈が短い造りの上に、生地の薄い安物なので何となく心許無い。
剥き出しの臑には夜風が随分と涼しく感じる。

「元々は部屋着用のつもりだったもんね。」
「このまんま外歩いても問題無いなら、別にえぇやろ……」
「そうそう、夏だし丁度良いさね。」

本来なら冷たい物でも飲みながら部屋で寛いでいる頃。
花火だったらベランダからでも見られる、寧ろ特等席なのだが。
双子の気紛れでふらりと此処まで足を運んだ。
甚平姿の理由は、そのまま財布と携帯だけ掴んで出掛けた為でもある。


家で羽を伸ばしている時と、夜を歩く今は同じ格好でも違った雰囲気。
楔波も紫亜も提灯の灯りを浴びる和装が妙に艶っぽい。
一方、祭りに溶け込んだ後姿はすぐ見失ってしまいそうでもある。

「早く。」

呆けていると命取り、「はぐれるな」と言われた傍から距離が出来る。
気遣いは無意識でも待ってくれるのはありがたい。

ふと双子が射的の屋台の前で足を止めて、数歩遅れた和磨も到着。
並んだ景品を目掛けて飛び交うコルク栓。
三人分の代金と銃を交換し、それぞれ胸に構えた。



同棲する仲でも和磨にとって双子の知らない面はまだ多い。
意外に感じる事も尽きず、射的に関してもその一つ。

大抵の事は出来てしまう紫亜が珍しく苦戦している真っ最中。
コルク栓が当たっても倒れなければカウントされない。
そう云う訳でまだ獲物はゼロのまま。
思いがけず目にした、真剣な様が何となく微笑ましい。

その隣で銃を構えた楔波が、静かに片目を瞑る。

たまに喫煙するので欲しかったのだろう。
手持ちの物はオイルが切れていたからと、ライターを討ち取った。

何事も無関心で不器用な彼にも得意な事はある。
食べ物の屋台すら素通りしてきたのに愉しんでいる模様。
それも、いとも容易く確実な狙いで。


そして和磨の場合、少しばかり近眼なので照準が定まりにくい。
日常生活には問題が無くても、こう云う時に困る。
眼鏡があれば引き金の指は軽かった筈なのに。
いつも掛けている訳ではないのでケースは家に置きっ放し。

「欲しい物あるんか?」
「あ、えっと……、あのウサギ可愛いなって。」

和磨を見かねてか他に欲しい物が無いのか、不意に問い掛けられる。
掌に乗るくらいのぬいぐるみを指した。
しかし、獲ってくれるのかと思いきやそうではなく。

「ちょ……っ、楔波、何で僕の後ろに回るの?」
「一つくらい自分で獲ってみ、フォローしてやるから。」

耳元で低音に宥められては逆らえない。
和磨の方が長身でも、膝を曲げた体勢では楔波に包み込まれる。
大人しく背後から抱かれる恰好。

台に肘を着いて、支える銃に骨張った手が重なった。
背中に圧し掛かる重みが心音を騒がせる。
もうコルク栓は残り少なくて後が無いと云うのに。
此処だと絞られたポイント、絡んだ指を引く。

弾丸が直線を描く瞬間。

眉間を撃たれて哀れなウサギは棚から転げ落ちる。
初めて命中、狩りの成功。



「和磨やっぱりそのウサギにしたのさねぇ。」
「ほんま好きやしな、そう云うの。」
「ん、そうだけど……ところで紫亜、それ、どうするの?」

揃って戦利品を手にしての道すがら。
一回分のコルク栓を注ぎ込んで、紫亜も目当ての物を獲れた。

何を仕留めたのかと思えば、玩具の警官ごっこセット。
プラスチック製の手錠に水鉄砲、警察手帳も中身はただのメモ。
紫亜の考えている事はいつも読めない。
まさか童心に返って遊ぶつもりでもあるまいし。


「あぁ、此れは……こう使うのさね。」

三日月の唇に警戒する間も無かった。
小首を傾げる和磨と、動じない無表情の楔波。
銀メッキの輪が二人の手首に噛み付く。

何を企んでか、紫亜によって手錠で繋がれた。


「ちょっと一人で遊んでくるさね、じゃあまた後で。」
「……えっ?」
「…………」

状況を呑み込むには数秒が必要。
咄嗟に呼び止めようとしても、鎖の所為でうまく動けず。
「後で」なんて曖昧にも程がある約束。
紫紺の甚平は一瞬で浴衣姿の人々に呑まれてしまう。

そうして小悪魔は雑踏に消えて行った。
隣り合って立ち尽くし、手錠を掛けられたままの二人を残して。


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