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== 梅染街 ==

蛇と林檎〈1〉(楔波×和磨×紫亜)

*性描写(♂×♂)

1話のみ、なりチャログを元にして構成されてます。
「温室ソリドール」の加筆修正。


教室で会ったって素知らぬ顔。
見詰めていようと少しでも目を離した間に姿を消す。
楔波が授業を抜ける事なんて珍しくもない。
クラスの誰も気に留めなくても、和磨だけは視線で追っていた。

屋上まで乗り込むには足が重くて動けない。
夢の出来事にも思えるほど遠い、唇に傷を刻まれた場所。

忘れてしまうには痛みが深過ぎる。
苦しんで、泣いて、恋を自覚してから随分経ってしまった。
そうして無音のまま夏も感情も終わるのだろうか。


「如何にかして欲しいんじゃないさね?」

切ない気持ちで塞ぎ込んでいた和磨に、低音は甘く響いた。
顔を上げれば金色の視線が突き刺さる。
けれど想っていた彼ではない、同じ目を持つ紫亜。


押し殺したつもりでも何も手につかないまま時間は過ぎる。
そんな日が続く、とある放課後の事だった。

和磨が居たのは普段ほとんど使われず無人となっている旧校舎。
夏休み前となれば生徒達は皆一様に、宿題のレポートに必要な資料を求める。
図書室にある目ぼしい本など貸し出されてしまった後。
少し遠出した甲斐があった、埃っぽい書物庫には一番乗りの模様。

其処に紫亜は現われた、尤もレポートの為でなく。
此処へ来た目的も言葉の意味も。


口付けの涙で和磨が赤くなった時、楔波は「襲われんなよ」と告げた。
今から思えば、あれは紫亜の事を指した警告。
すぐ後で絡み付いて唇を舐められたのだ。
折角見付けた新しい遊び道具、突付くだけでは物足りなくなったらしい。

差し伸べられた手は楔波と違う、赤い爪。

分かっていても拒む術など無し。
何処かが振り切れ、縋るように握り返した。



「って事は……俺が襲っても良い訳か……v」
「え、紫亜君……何でそんなに嬉しそうなの、ちょっと……!」
「ふふv 俺が襲っても抵抗出来ないからさねv」
「あー……そう、かもしんない…結構流されちゃうし……」

真昼でも薄暗さを保つ廊下を抜けて、何年の前から時を止めた教室。
紫亜に手を引かれるまま連れて来られた。

太陽が居座る夏の空にも夕暮れは必ず訪れる。
閑散とした空間はいつでも床に冷気がこびり付き、今の時期でも涼しい。
朱色の混ざり始めた光が差せば、距離を詰めた人影も濃く。

気持ちを抑えていた和磨の姿は、想い人でなく片割れを愉しませていたらしい。
小悪魔の目で「美味しそう」と舌舐め擦りしていた。


「くすくす……でも和磨は楔波に触れられたいんだっけ……」

含み笑いで声を揺らす紫亜が金茶の髪を撫でる。
手が早いと思いながらも、当てられた本音に強く頷いた。

今までずっと考えていた事だ、紫亜の言葉は。
唇で意識した恋心は欲情に繋がる。
薄い夏服で隠れた肌にも口付けて噛んで、傷が欲しいと。

「でも、期待出来ないよ。興味ないとか好みじゃないって言われちゃったもん……」

触れておきながら初めて逢った時から冷たい態度は変わらない。
愛だの恋だのを知らない楔波にとって、あれは気紛れ。
そう知っていても、思い出すと胸が痛くて涙まで滲んでくる。


「ふふっ楔波らしいさねぇ……俺が楔波を呼んでやろうか?」
「えっ……何か、裏がありそうな気がするけど……本気?」

大人しくしていた和磨が恐る恐る顔を上げた。

「別に。ただ楽しそうだから♪ ……和磨が呼べって言ったらね。」
「ッわ……!紫亜君油断ならないよね、本当に……そりゃ、会いたいけど……」

頬にキスされて、今度は思わず跳ね上がる。
望みを叶える意図が読めないが、それもまた楽しみなのだと紫亜は言う。
事実、笑みを絶やさない三日月の唇。

「……そ。じゃぁ呼んでやるさね。」
「……う、うん……あー、でも何喋って良いのか分からない……」

紫亜の囁きは要求を呑んだ証。
再び頷いた後、和磨は熱くなっていく顔を片手で隠した。
裏があったとしても飢えには逆らえない。
あれ以来見ているだけだった、楔波に対する浅ましい程の空腹。


「くすくす、何も……喋らなくても良いさね。ね、楔波。」
「……何で呼んだかと思えば。そう云う事か。」

紫亜が視線を投げたのは開いたままの引き戸。
黒髪の人影が姿を現し、低音で溜息吐いて此方を見る。
和磨が恋焦がれていた冷徹な目。

いつから居たのだろう。

「呼ぶ」なんて紫亜もよく言う。
多分きっと、最初から仕組んでいたくせに。


「う……機嫌悪くした?だって、でも、そうでもなきゃ会えないでしょ……」
「……何故お前がそんな顔をする。
 俺が此処に居るのは紫亜に呼ばれたからだ……こいつの娯楽の為にな。」

教室に踏み込む楔波は迷いが入る隙が無い。
足音さえ鋭く歩み寄られれば、対照的に和磨が口篭もる。
紫亜に従っただけ、そうだろう。
その言葉も何となく予想していた、自分に会いに来た訳ではないと。

「くすくすv 和磨が楔波に触れられたいって言うからさねv」
「あっ、ちょっと……くすぐったい!」

首筋に細い指が這わされてぞくりと震えた。
繰り返し何度もされてきた、悪戯めいた触れ方。

それも、もう色を変える。

「和磨は消極的さねぇ。それどこまで耐えられるんだろうね……」
「意志が弱いのも困ったもんだな……」
「ちょっ……ほ、本気…?冗談ならやめてって……」

手指を捕まえた紫亜が抵抗を封じ、今しがた這った跡を舌でなぞる。
顎を捕まえた楔波が自由を奪い、空いている側の髪を払い除けて耳朶を噛んだ。

屋上でキスされた時と同じ空気。
それでも全て委ねるには疑念が拭い切れず。
夢見心地に浸った途端、また一瞬で離れるかもしれない。
何事も無かったような顔で。


「触れて欲しかったんでしょ?……ね?」

身体を縮こまらせて戸惑う和磨に小悪魔が囁く。
しっとりと仄暗い艶の絡む声。
必死で隠そうとしていた物を、その呼び水は暴こうとする。

「……お前に気があろうが無かろうが、少なくとも冗談ではやらん。」
「そ、俺らはいつでも全てが『本気』だから。」

くすくす喉を鳴らす紫亜も、反対の耳朶に歯を立てる。
楔波以上に容赦無い強さで。
焼け付く痛みは小さな傷を作り、一筋の血が伝う。

そしてまた、欲望も流出させる。

「や、痛ッ……!それは、まぁ……望んだのは嘘じゃないけど……
それに、途中でやめてはくれないだろうしね……」

滲んだ涙で歪む和磨の表情は朱色を増す。
もう認めるしかあるまい。
格好が付かない事も承知、切れ切れの言葉で降伏を告げた。


「素直さねv 大丈夫、ちゃんと最後は楔波にヤってもらうから。」
「……嘘ではないのなら……ちゃんと受け入れろ。」

掴まれたままの顎が引き寄せられて、楔波が唇を塞ぐ。

触れ合った吐息を感じたのも刹那。
柔らかく湿った熱に呼吸を奪われ、全身が痺れた。
ずっと待ち望んでいた事。

当然ながら二度目のキスにメロンソーダの味は絡まない。
強く根付いた恋情が唾液を蜜に変える。
楔波の匂いで切なくなる甘さ。
如何にも堪らない気持ちになり、瞼を落として味わう。


「くすっ……楔波は興味をあまり持たないけど、ヤる時は俺より強引だから。」
「んッ……うん……、うぁっ……紫亜君、背中はちょっと……」

耳朶の傷を愛でるように舐めながら、紫亜が囁き声を吹き掛ける。
其処にばかり気を取られていたのは油断。
不意を突き、細い指がシャツ越しに背筋を撫で上げた。
楔波にしがみ付くばかりだった和磨も意識を一瞬持って行かれる。

「紫亜を見るな……」

面白くないとばかりに、楔波が剥がれた唇を塞いで引き戻す。
奥深くまで絡めて濡れた音。
首に腕を回し、先程よりも強く抱いて和磨も応えた。
蕩けそうな幸福感が息を詰まらせる。

「……ふふっ、ココが良い?」

しかし、小悪魔は手放しで浸らせてくれない。
背中が弱い事を知ったからには。

びくびくと身体が反応する部分ばかり探り、執拗に撫で擦る。
キスとはまた別で乱れる和磨を笑う。
とうとうシャツの裾を捲られて素肌にまで触れてくる。
潜り込んだ指先の冷たさに、新緑の目が見開いた。

「……聞こえなかったか?」

息継ぎする隙、その距離で楔波の唇が冷たく舌打ちした気がした。
少なくとも低音に混じる苛立ちは間違いじゃない。

謝罪を口にしたって遅かった。
強引に言葉を封じられ、噛み付かれた舌に鋭い痛みが走る。
楔波の命令に背いたお仕置き。
欲しかった物だけ見詰めていろと、そう言われた気がした。


溶けた腰を支える楔波の手で硬い床へと組み敷かれる。
髪も息も乱れた和磨に、日頃の柔らかな印象は残っていない。
新緑の瞳は濡れ、光に透けるガラス球を思わせる。


蛇の冷たさで見下ろしてくる、金色の眼が二対。
もう他に何も見えやしない。

既に灯っていた情欲は、其の視線で何よりも火を増した。
熟した果実のように赤くなる肌。
そうして双子が表皮を剥く手で、制服のボタンを外し始める。
窮屈にしていた下腹部も撫で上げて。


「……そのうち全てが快感になるさね……v」

和磨の蜜で艶めく赤いマニキュア。
舌を伸ばして指先を舐めながら、紫亜が唇を歪めてみせた。
口に合ったようで、残らず味わって上機嫌な笑み。


食べ頃を待つのは終わり。
背徳すら糖度を上げるエッセンスになる。

鮮烈な夕陽の教室、掠れた喘ぎで染まり始めた。


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