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== 梅染街 ==

群青失楽園〈1〉(楔波×和磨×紫亜)

桜桃さんとのなりチャを元に構成した、双子君×和磨の馴れ初め編です。
長いこと空白になってましたがこの度小説に書き起こしてみました。



雨が降っていれば、僕らは何も知らないままで居られたのに。

嫉妬に苛立ち、熱の痛みも苦い涙も。
未来永劫に平穏が続く筈だった世界の終わり。



明るい空に放課後を告げる鐘が鳴り響いた。
教室に押し込められていた生徒達が鞄を抱えて階段を下りていく合図。
ただ、皆一様にと云う訳ではない。
そんな群集に呑まれず、ひらり背を向けて歩いて行く男子の姿も。

周囲より頭一つ分ほど高い、ふわふわ柔らかい巻き癖の金茶。
零れそうに大きくて垂れ気味な緑の双眸。
軽く開いたシャツの胸元は生白く、細腰と相まって華奢な印象を受ける。

熱と湿度が上がり始めた6月の校舎。
新品の夏服に汗が滲む気配に、巽和磨は茹だる表情で目を細めた。

だるさに思わず欠伸まで零れたが、誰かの目を気にすることは無い。
上へ続く階段は進むたびに騒がしさから遠ざかる。
そうして目指すは、開かずの屋上。
小脇にスケッチブックのセットを抱えて。


それでも鬱陶しい灰色の雲が見えないだけ滅入らずに済む。
やる気を削がれる梅雨の真っ只中、久々の快晴。
白いページに新しい景色を刻むには今日しかあるまい。

入学してから二ヶ月、趣味なので校内のあちこちで描いてきたつもり。
それなら真っ先に眺めの良いスポットを選ぶだろうに。
高い所が苦手で何となく倦厭していた為、屋上へ向かうのは初めて。
階段一歩踏み込むたび缶の中で色鉛筆が賑やかに鳴る。

挑んでみようなんて気になった理由は、スケッチ以外にもう一つ。
「屋上に近付くな」と云う警告めいた噂。
閉鎖されている訳でもないのに、お陰で人が寄り付かない。

影の濃い仄暗い空間を抜けて、辿り着いた階段の終わり。
何があるかは扉一枚向こう。
和磨も好奇心旺盛な性分でもないが少しは興味があった。
多少の緊張で固くなった手がノブを回す。


軽い金属音を押し開いてみれば、フェンスが聳え立つ広い空。
降り注ぐ陽と初夏の風の匂いが満ちる。
先程までの濁りすら洗われる麗らかさでも、青一色だけではなかった。

インクの雫を落としたような、漆黒。

「……あ。」

其処に彼は存在していたのだ、必然を以って。
先客が居た事に思わず和磨が声を零す。


急に明るい場所へ出て眩みそうになった目でも吸い寄せられた。
フェンスに寄り掛かった黒髪。
夏服のシャツを羽織った胸がそこそこ厚い、細く締まった体格。
目を閉じていても端正で大人びた顔立ち。

眠っている男子生徒の名は楔波。
気配を察して不意に瞼を開き、視線を和磨に投げ掛けた。
獣じみた冷たい金色の瞳。

そうして視線で縛っておきながら再び瞑る。
和磨は此の眼が苦手だった、とても。


そう云えば、いつの間にか教室から姿を消していた事は多々。
何処へ行ったかと思えば。
屋上に関する噂の真相は、彼らが独占していた所為か。

和磨のクラスには学校でも有名な不良の双子の兄弟が居る。
少し変わった名前で、楔波と紫亜。
二卵性らしく外見や性格は違えども、瞳だけが血を分けた証だった。
世にも珍しい爬虫類を思わせる金色。

碧眼の人間など海の向こうに幾らでも住んでいる。
けれど、発光するように鮮やかな蒼も至極稀に存在するのだ。
彼らが生まれ持った色もまたそんな類。

髪も目も黒い国では和磨だって異端視されるので人の事を言えない。
イギリス人の祖母を持つ為、色素が薄いのは生まれ付き。
加えて、甘い顔立ちに伸び続ける長身。
良くも悪くも浮いてしまう同士で親近感も少なからず。


ただし、和磨に友好的なのは紫亜の方だけ。
ちょっとした切っ掛けで双子と会話をした時の事は忘れもしない。

和磨が彼らに抱いた印象は、無感情。
風変わりではあるが、確かに喜怒哀楽が乏しい冷めた子供は現代に多い。
恐らくそのまま身体だけ育ってしまったのだろうと見た。

そのくせ欲求の強さは若い雄なので質が悪い。
恋愛を解からないまま、興味が湧いたら性別も構わずに強引。
色香が匂い立つ双子は相手に不自由しない。
そうして肌を重ねたとしても、生来の飽き性ですぐ終わってしまう。
此れもまた現代に良くある話か。

双子と云えども欲情する興味対象も違う。
和磨も紫亜から口説かれたが、楔波にとっては「好みではない」らしい。
うっかり軽い失言をしただけで髪を掴まれた。

以来、腹立たしさもあって苦手意識が芽生えたが如何でも良い。
その時に和磨も自分の事を幾つか喋った。
中学生の頃から付き合っている彼女が居る事。
家族揃って2年前に海外へ移住したが、馴染めずに体調を崩してしまった事。
一人だけ帰国して休養後に入学したので皆より1つ年上である事、など。

現に誕生日を迎えて17歳になったのはほんの先日。
彼女とは遠距離になってしまったが、一人暮らしのアパートに来てくれた。
お祝いもして穏やかで良好な関係。
好きでもない相手と、なんて和磨にはやはり無理。


ぼんやり考えながらも色鉛筆の手は進む。
広げたスケッチブックに描き出される、優しい色彩の初夏。

真下を見るのは怖くても景色は悪くなかった。
春に薄紅で華やぐ桜街方面は今、此処まで匂い立ちそうに鮮やかな新緑。
昨日までの雨でたっぷり水を飲んだ後。
強い陽を浴びて風にざわめく様が、実に生き物らしい。

楔波から離れて、手元とフェンスの向こうを行ったり来たりの視線。
悪い事をしている訳でもあるまいし場所を変える必要も無い。
屋上には和磨一人、そう思い込もうとしていたのに。


「……何や、お前こんなん描けよるんか。」


背後から静寂を切り裂いた、無表情の低音。
忍び寄った影が落ちる。
振り向いた緑と、切れ長の金色が繋がる瞬間。

其れはきっと空高く投げられた賽。
無音の世界が終わる。


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