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== 梅染街 ==

花も嵐も(楔波×和磨×紫亜)

四月も半ばですが、ずっと書き損ねていたのでお花見ネタを。
折角、桜街に住んでるんだから一度くらいは!


薄紅の世界は静かに滅びて行く。
何も恐ろしい事など起きやしない、平穏な四月の中で。


春を迎えると桜街は華やかな魔法に掛かる。
青い空へ伸ばされた枝一杯に、無数の小さな花が開くのだ。
満開の頃なんて、夢を見ているような錯覚に陥ってしまう幻想的な美しさ。
優雅に微笑むように咲き誇り、誰もが心を震わせる。

しかし、いつの年も桜の盛りとは短い運命。
荒れる風雨に晒されながら数日経過、花は見る間に散っていく。

入学式を迎える頃にはどれだけ残っているか。
赤い芯や新緑の色がぽつぽつ混じり始めて、薄紅はもうすぐ終わり。
やっぱり魔法は消えてしまう物。
美しかった分だけ、現実味を帯びた景色は可笑しみがあった。


けれど、そんな桜の姿も悪くないものだと和磨は思う。
隙が無く完全無欠の物など惹かれない。
儚いと云う弱点があるからこそ、桜には愛着が湧くのだろう。

満開を過ぎて見物人も少なくなってきた、並木道の下。
高い順から金茶と黒と栗色。
花に隠れた空を見上げながらも陽射しの強さに細められた目。
緩い足取りで進むのは、双子と和磨。


桜街に住んでいるのに、こうして揃って花見へ出掛けるのは初めて。
春休み中は雑貨屋もカフェも桜のフェア。
街の住人だけでなく観光客まで加わるので混雑は免れない。

和磨が忙しかった所為もあるが、楔波も面倒臭がってあまり外出を好まず。
紫亜と云えば相変わらず考えも読めない。
春休みも終わるし折角だからと、気紛れを起こしたのが今日の昼。
公園から桜校まで続く並木道へ散歩に来た。
隣街の学校に通う三人にとっては、腰を上げないと縁が無かった景色。

花見に誘うとしたら此の中では和磨の役目だったろうけれど。
初めて気付いた、今まで考えた事も無かったと。
此の冷たく無感情な双子に、花を愛でる心があると思えなくて。

「……ごめんね。」

そう考えてしまっていた辺り、二人にとても悪い事をしていた。
小さな響きでも謝らずにいられない。

確かに出逢ったばかりの頃なら桜に興味を持ったかは分からない。
しかし、和磨と触れ合ううちに心境にも変化が訪れた。
いつまでも同じではないのだ、花も人も。


今日も花で重い枝を揺らす風、絶えず降り注ぐ姿は雪によく似ていた。
ただし、積もったりせず靴の爪先で軽々と散らされる。
足元に点々と零れた薄紅。
多くの人に踏まれて貼り付き、歩道に雫模様として残る。

上も下も視界を染める春。
花ばかり見ていると首を痛めてしまいそうだ。

双子が空を眺めるのは馴染みの姿。
けれど、手元が疎かになると危うい事情が一つある。
今度は聞こえる大きさで和磨が声を掛けた。

「放っておくと溶けてきちゃうよ?」

スタート地点の公園でクレープ屋台に寄ってきたのだ。
散り掛けの桜だけでは味気無いので、食べ歩きしながらの花見。

そう云えば、クレープも桜街の名物なのにこんな機会も初めて。
楔波が甘い物をあまり好まない事も挙げられる。
実際、半分程しか手付かずのままで忘れられているような状態。
美味しいのに何とも勿体無い。

それから三人にとっての場合、野外と云う問題も絡む。
情交で甘い物を使う事が多々あるのだ。
人目を気にしない双子は所構わずなので、和磨も油断出来やしない。

去年の夏祭りを不意に思い出す。
喧騒から隠れて、あの時は串刺しの姫林檎で遊ばれた。
声を殺す為の轡代わりに口へ一つ、快楽を与える為にと戦慄く秘所へ一つ。
端から双子に舐められても溶け出す飴。
身体中べたべたになってしまい、肌蹴た衣服のまま足早に帰った。


「何や……、溶けそうなのはお前の方やろ。」
「桜と同じ色になってるさね、顔。」

重なる低音が、和磨の意識を夏から春に戻す。
どうもぼんやりしてしまうのは暖かさの所為かもしれない。
桜は人の気持ちを柔らかく浮かせる。

何でもない振りで、残り少ないクレープを齧った。
真っ赤な苺は春に合わせて。
甘酸っぱい果汁が生クリームと混ざり、口の中も薄紅。

そっと窺ってみると、視界の端で紫亜が妙な動きを見せた。
上を向いたまま、何も無い筈の所で食い付く仕草。

「何してんの?」
「花食べてるのさね。」

興味を持った事になら紫亜は本当に器用だ。
突き出した赤い舌、捕らえた薄紅一枚を此方に見せる。
そうやって喉で笑うと愛らしさより艶が強い。


わざわざ舌を伸ばさずとも、手元のクレープにも降る。
舞ってはそこかしこに貼り付いてくる花弁。

色素の薄い紫亜と和磨には溶け込んで紛れてしまうけれど。
髪も服も真っ黒な楔波に、桜の淡さはよく目立つ。
気にする訳でもなく冴えた横顔。
見蕩れていると、不意に死角から袖を引かれた。

「花ごと落ちてきたから和磨にあげるさね。」

紫亜の手には、散らないまま綺麗な形を保った桜。
本当は枝から毟り取ったのかもしれないが、金茶の髪に留める。
冷たい指先が細かに蠢いてくすぐったい。
和磨から見えなくても、ピアスが光る耳元で花を咲かせた。

「お前はそう云うの似合ってんな。」
「あ、ありがと……」

楔波にも頭を撫でられると、嬉しさと気恥ずかしさが混じる。
欲求が湧き上がる熱。
双子と違って和磨は表情に出やすい。
そうして、唇を重ねて苺の味を分け合った。

わざと言葉にさせる事もあるが、飽くまで羞恥を煽る為。
本当は必要など無いのだ。
和磨が欲しい時、楔波はいつだって応えてくれる。

「っん……!」

握られた手首も唇で噛まれて、甘い痛みに声が零れた。
脈打つ場所に桜色を咲かせる。

コートを脱いだ軽装の下、和磨の肌に残る物と同じ。
此処では指先を絡めたら終わり。
微熱の宿った身体は足早に持ち帰られる、クレープと一緒に。



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