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PowderSugarLess(鞍吉+和磨)

ちょっと早いけどバレンタインSSです。
チョコ代わりに…和磨から鞍君へ!


灰色をした朝、間抜けな欠伸で一瞬だけ白く染まった。

無防備に口を開けたものだから容赦なく冷えた空気が流れ込む。
乾いて痛む喉の奥に反して滲む涙で濡れる睫毛。
潤んでも仕方ない眼を擦って、和磨が指先の雫を小さく舐めた。


バレンタイン前の最後となる休日、「SweetSmack」は朝からチョコレート色。
当日まで保つアソートや焼き菓子などは飛ぶ勢いで消えていく。
女性客が集まってパーティを開くテーブルなども。
イベントの恒例、和磨もホールの手伝い。

釈七や鞍吉が作ったチョコレートを女性客が購入し、彼氏に渡す訳である。
菓子屋の陰謀とは云えど経済は不思議だ。
此処でバイトをするようになってから、和磨は毎年思う。


紫外線は色素が薄い和磨の敵でも、青くない冬の空もあまり歓迎出来ず。
晴れるかどうかも怪しい広い雲。
早めに家を出たが、こんな暗さでは時間も読み取れやしない。
ブーツで叩く歩道も乾いた音。

寒さで強張った身体に纏う物は、制服の時と違ってコートじゃない。
首元をフェイクファーが守る厚手のニットポンチョ。
ブランケットに包まる安心感そのままで何処へでも行けるのでお気に入り。
ただ、少しばかり動きにくいのが難点か。
腕を振ると思わぬところで裾がぶつかったり汚れたり。

例えば、今だって。

肩を軽く叩いて呼び止めようとして、邪魔な裾に阻まれた。
竦めたように丸めがちな背中。
ボディバッグに揺れる、小さな金色カラス。

「……またダークフォース出てるね。」

片手を腰に当てたところで振り返った鈍い動作。
「おはよう」よりも先に妙な挨拶をされて、思い切り怪訝な顔。
踏み出した一歩、二歩、和磨が隣へと並ぶ。

今からバイトだったら行き先は同じ。
鞍吉が仲間になった。


「鞍君、腰押さえてたけどそんなに疲れてんの?」
「ソファーで寝てるから身体痛いだけだよ……」
「あぁ……、喧嘩したんだね。」
「晃は悪くねぇよ、別に何もねぇっての……」

喧嘩しても寝る時は一つのベッド、変な意地を張ってはいけない。
何処かで読んだおしどり夫婦の言葉が過ぎった。

暦の上で春を迎えたって、まだ布団を重ねないと夜を越すのは厳しいのだ。
こんな冷える季節にソファーで寝るなんて只事じゃあるまい。
何より、誤魔化しきれないウサギの目。


そう云えば、以前は楔波もソファーが寝床だったと言っていた。
和磨が一緒に住むまでベッドは紫亜専用。
確かに充分な大きさだが、今ではすっかり三人で潜る物になった。
真ん中に居る和磨が双子を繋いだ形。
二人とも体温が低いだけに、寒い時期には人肌を離さない。

そう、欲しがる事は決して悪いものじゃない。

鞍吉の欠点を挙げるとすれば"人を頼らない所"だと和磨は考える。
自分が弱いと思うなら、尚更手を伸ばす必要があるのに。
鞍吉の胸に抱えている物はきっと重い。
聞かせてくれれば軽くなるだろうに、和磨に持たせる事を遠慮する。

会話が途切れたら靴音二つ響くのみ。
そうして物寂しい視界に飛び込んだ、暖かそうな空間。

「肉まん奢るから寄ってかない?」

和磨が指差す先、バレンタインフェアのポスターが鮮やかなコンビニ。
まだ時間にも余裕がある事だし。
何か言いかけた鞍吉も、腕を取ると溜息を吐いて諦めた。
自動ドアに迎えられて半ば引っ張り込む形で中へ。




「済ませて来たんだけどな……、朝飯。」
「がっつり食べた方が良いよ、此れから忙しいし。」

包み紙越しでも熱の塊に痺れる、冷たかった指先。
再び外気に晒されようと、持っているだけで随分と心穏やかになる。

行儀は悪いかもしれないが、食べ歩きしか選択肢は無い。
紙を開けば湯気を立てる真っ白で柔らかな膨らみ。
齧り付いたら止められない、肉汁で火傷しそうになりながら頬張る。

暖かな物を一緒に食べる時の幸福感。
その隣が愛する人とでなくても、悪くはないのだ。

一杯の湯気に包まれて、腹の奥から温まり始めてくる。
カフェに着くまでは全て胃に収まるだろう。
けれどその前にでも、鞍吉にはまだ渡す物があった。
肉まんを咥えて自由になった両手、和磨が開いたバッグの中を探る。

「涙拭く時に必要でしょ、持ってなよ。」

食べる事で無心になっていた眼が、訝しむ色になる。
和磨が差し出たタオルに対して。


「どう云う意味だよ、今は泣いてねぇだろ……」
「鞍君が望む方で取って良いよ、「もう泣くな」でも「好きなだけ泣け」でも。」
「そうじゃなくて、だから……」
「話したくないなら事情は聞かないけど。拒絶しても無駄だよ、色んな意味で。」

必死で追い掛けて、しがみついて、やっと此方を見た。
苦味を乗り越える恋だったのだ。

そんな和磨からすれば、釈七の事で悩む鞍吉の気持ちはいまいち解からない。
最初から優しかったろうに何が不満なのやら。
兎も角、此れだけは言える。

「釈七さんが鞍君を想う気持ちの方が強いからね、絶対。」

其れは「観念しなよ」の意味を込めて。
逃げられると思っているなら、無駄な抵抗だと。
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== Comment ==

Brown Bitter Chocolate
細められた碧色は、曇天の下でも色鮮やかだ。
愛らしい刺繍の入ったハンドタオルを手に、鞍吉はそんなどちらでもいいような思考を巡らす。
何時も通りの飄然とした笑顔とともに、投げかけられた一言をよそに。

次にふと口を突いたのも、一連の流れとは全く関係の無い言葉。
「…………ほんとに何かの大木みてぇだよな、それ」
クリスマスの翌日…鞍吉の誕生日の時にも目にした、モスグリーンのニットポンチョは、フェイクファーとも相俟って正に雪でも被った樅の木さながら。
「………って。人の話聞いてた?鞍君」

聞き流したわけでは勿論、無い。
ダークフォースだか何だか知らないが、兎に角気分が滅入ってることを悟られた。
涙を拭けと、こんなタオルまで渡され。
…情けない、と鞍吉は思った。何時から自分は、事情など全く知らぬ相手にすら気取られる程弱さを見せるようになってしまったのか。
それとも和磨が目敏いだけか…。

何にせよ。
慰められている、と頭が理解するのを妨げるように、残り僅かになった肉まんを口に押し込む。
実際に喧嘩でもしたとか、退っ引きならない事態でも起こったとかいうのなら話は判るが、鞍吉にとっての「疑念」は、常に精神の水底に渦巻く澱のようなものだ。
そんなものをいちいち気に掛けられていたのでは、和磨自身の現状を思慮する暇さえ無くなるだろう。

…お前だって色々「大変」ではあるだろうに。

『釈七さんが鞍君を想う気持ちの方が強いからね…』
少し前の鞍吉なら、「お前に何が分かる」の一言で断ち切る台詞だ。
だが流石に、この掴み所のない年下の相手を少しずつ知るようになって、その応対は誤りだということは認識している。
気紛れで、感情の所在が不確かなあの双子を受け止め、傍から見れば少々歪んだように見える形でも彼等との愛情を紡いでいる和磨だ。
感得の是非、は問題ではない。あらゆる起伏を乗り越えてきた経緯は、それを誰がどう感じようと互いに持ち合わせている筈だ。

「……いいよな、お前は」
再びの沈黙…乾いた足音だけを響かせ歩を進めて後、鞍吉が放ったのはしかしそんな呟きだった。
相手の状況を鑑みたにしては、いささか矛盾している。それを薄々感じ、拙いな、と気付いてもとっさに飛び出した言葉は消せない。
「……何が?」
軽く眉根を寄せ、僅かに和磨が歩幅を狭める。訝しんだ様子を側面に感じても、もう後には引けなかった。
「好きな相手のことを、自信を持って「好きだ」と思えて、さ」

世間一般の認識からすれば、同性を恋するという部分を差し引いて尚、少々アブノーマルにすら見える関係を、和磨は無論おおっぴらに吹聴している訳では無い。
寧ろそれをおおむね把握している鞍吉にさえ、羞恥しながら言い淀むことの方が多い。
にも関わらず…和磨には、何処か確固とした自信が見える。
あの双子を繫ぎ止められるのは自分だけだと。彼等を誰よりも愛し、想えるのは自分なんだと。

実際は思い悩みもしているだろうし、ただ単に和磨の飄々とした態度がそう見せているだけなのかも知れない。鞍吉の把握していない事情など山ほどあるだろう。
しかしそれでも…和磨は彼等との…楔波と紫亜と過ごしてきた時間に、誇りと矜持を持っているように、見える。これが自らと、彼等の間にあるの愛情の形なのだと、胸を張っているように。

鞍吉の返事に、和磨は更に不思議そうな顔をする。
「…鞍君は違うの?好きなんでしょ?釈七さんのこと」
「……まぁ、な。けど…」
口ごもる。怪訝に思われても仕方ない。
おそらく、周囲には鞍吉は羨望をも懐かせる程愛されているように見えるだろう。鞍吉自身、釈七の感情そのものを疑っている訳では無い。
だが、どうしても拭えない不安。ただでさえ語彙の貧困な鞍吉には、この感覚を口に出して説明するのは難しい。和磨にも、釈七本人に対しても。

強いて言うならば…そう、「根拠」が見当たらないのだ。己が釈七に愛されるべき根拠。注がれる愛情が、釈七の裡から本当に溢れ出ているものだという根拠。
そんなことは有り得ない、と信じたくとも何処か空虚に響く言葉。
故に、鞍吉自身の投げかける想いなどは時折素通りしてしまっているように感じる。
自分が想っている相手は一体「誰」なのだろうと。其処に居て、触れて、相手は確実に存在している筈なのに、まるで傀儡と接してでもいるような…。

分かっている。そんな事を言えば、きっと釈七はこの上なく悲しむだろう。自分の弱さが思わせる、錯覚かも知れない。だから決して口にはしない。口にはしないが…その思考は古傷のように心の奥底を侵食し、様々な「切欠」でじくじくと血を滲ませる。

多分「どうにもならないこと」なのだ。少なくとも今はまだ…鞍吉や釈七の「想いの強さ」では如何ともしがたいこと。
いくら強い力を放っても、ぶつかりどころがなければその威力の値は見えない。

和磨にも、その実同じ様なことがあるのかも知れない。
だからこそ、その揺らがぬ想いが眩しい。
鞍吉とは逆に、些細な物事を確信へと変えていける力が眩しい。

けれど、それを伝えたところで当の和磨本人はそんなことを意識していないのかも知れなかった。おそらくは、そんなことは無いと困惑の表情を浮かべるだろう。
総ては鞍吉の主観、やはり口は重くなった。


繋ぎかけの言葉を放置したまま、それでも休むことなく動かした足は二人をカフェの前まで運んでいた。
ウィンドウ越しに伺える、ブラウンとピンク。
しかし鞍吉の目には今年もフィルターのように被さる、くすんだ青。

去年の悶着は、和磨も薄々と知ってはいるだろう。それを取り立てて話題にするような相手ではないことも承知しているが。
あれから一年、それなりに色々な事があって…変わったこともあるが、相変わらず鞍吉はこの街に居て、このカフェで働き続けている。
バレンタインデーは鞍吉にとって、未だ幸せな恋人の記念日ではない。塞がった筈の傷口を、じわじわと爪で押し広げるような日なのだ。

ロッカールームで制服に袖を通し、意識的に深呼吸をする。
「………なんで、恋心を伝えるのにチョコレート、なんだろうな?どす黒いし、苦みもあるしさ…」
横で、イベント時恒例のひらひら衣装を身に着けていた和磨がそれを聞き、思わず吹き出す。
「でも甘いし、すぐとろけるからね。すこーし苦みもある方が、恋に近いんじゃない?」
「そうか…?別に俺も、チョコが嫌いってわけじゃねぇけど…」
そこで僅かに鞍吉は言葉を切り、嘆息しつつぼそり、と
「…だったら、俺は肉まんの方がいいな。ふわふわしてあったけぇし、腹にも溜まる」
和磨は一瞬目を丸くし…本格的に大笑いに至った。
「なっ、何だよ…。まぁ、確かに色気はねぇけどよ…」
「いや…。じゃあ僕が奢ったのも、立派なプレゼントになったかな、って」
収まらぬ笑いを含みつつ、和磨が返す。馬鹿にされたのかと少々憮然としながらも、
「……まぁ、な。ごちそーさん…」
先に扉を出る背で、鞍吉は答えた。
「タオルの方は、ちゃんと洗って返すから」

自身の想いがどうであろうと、それを作るものに映してはいけない。
本命であれ義理であれ友情であれ、その菓子を以てして、客は心を伝えるのだ。
仕事の時は、痛む傷に蓋をする。
己の存在意義をいまだ見失いがちな鞍吉なればこそ、販売するチョコレートには如何なる感情も反映させてはいけない、それが礼儀。
想いならば、贈る本人が上掛けすればいい。

しかし。
和磨にはここのところ何かと貰ってばかりだ。
当日は彼等なりのイベントもあるだろうから、前日辺りに何か返そうか、と鞍吉は考える。
勿論双子も、一緒に食べられる物を。
…それにはほんの少しだけ、想いを込めよう。
和磨の気持ちが、この先ずっと揺らがぬように。
紫亜と楔波が、それに応える場面がもっと、確実に増えて行くように。
それはやがて、形を変えて鞍吉にもささやかな希望となって返ってくる。

春を目前にしながら、一年で最も凍える季節。
今は身を切る風雪も、耐えてしのげば柔らかな日差しが降り注ぐと。

****

肉まんとさりげない和磨君の優しさが沁みたので、お返事を!

…と思ったのですが、やっぱりまだちょっと重めですみませんー;

中華まんはふはふする光景って、なんか可愛いですよねw

いつもありがとうございます!!(ノД`)・゜・。
Bitter Bitter Sweet
甘い香りで満ちたカフェに、ピンクとチョコレート色の衣装がひらめく。
ケーキを運ぶ店員達は誰もが忙しない。
気に入った服があっても、長身の和磨には着られない事が多々ある。
此処ではオーダーメイドなので無事に袖を通せたけれど。

甘い物が好き、可愛らしい服が好き。
だからカフェでのバイトも好き、其処に偽りは無い。

けれど、本当に好きなものに対する愛情は全く違う種類。


「好き」には素直、それだけが武器。
鞍吉から羨ましいと言われてしまっては、複雑な心境に成らざるを得まい。
彼の不安が内側から来る物なら、和磨の場合は外側。

周囲の皆に平等な愛情を振り撒いて、自らも可愛がられる和宏。
寂しげで放って置けなくて、惹かれずにいられなくなる鞍吉。
其れは双子だって例外でなかった。
好みじゃない、興味も無い。
そう言われていた和磨にとって、二人の存在は不安の要因になる。

着飾っていたプライドを脱がされて裸の和磨に唯一残った物。
もう「好き」だけしか無いのだ。
四つん這いの獣になって、双子に尻尾を振るしか。

関係が終わるとしたら、飽きられた時。
どんなに辛くても此方から離れたりしないと固く決めた。

明日、終止符が打たれるとしても構わない。
どうせ双子次第なのだから和磨が縋ったところで無駄だろう。
愛する事しか出来ないのならば、今を惜しまずに注ぐだけ。
他に失う物なんて無いのだ。

想いの力は強い力を持つ。
そんな覚悟で付き合っていたら変化は少しずつ現われた。

いつからか、ただの玩具だった和磨を大事にするようになった。
泣かせて苛めるだけでなくて、笑う顔も見たいと甘やかして。
見逃しそうな小さなサインを一つ一つ拾っていけば、双子なりの想い。
確かに愛されていると云う実感。

感情を知らなかった双子ですら可能性があるのだ。
鞍吉だって釈七が変えてくれるだろう。


それに双子と恋愛の意味で関係を築くには、和磨でないと無理が生じる。
鞍吉でも和宏でも。
既に本来の相手が居る事とは別にしても、である。

普通なら、釈七や慈玄が相手だったら。
真っ直ぐ見詰めて唇を重ね、「好き」だと告げれば通じるだろう。
双子には駄目だ、はっきり言って全然足りない。
跪いて足に口付け、「身も心も二人だけの物」だと誓わなければ。
それを快楽と受け止めて、蕩けた眼で。

嫉妬深い双子は、所有物を他人に触れられる事を嫌がる。
何しろ談笑していただけで不機嫌になるのだ。
彼ら以外を頑なに拒む覚悟が無ければ、向こうから捨てられてしまう。

当人が気付いてなくても、生まれてからずっと空腹で堪らなかったのだろう。
恋愛感情の認識が無いくせに求める時は貪欲。
それは厄介でもあれば、だからこそ和磨は安心していられる。
今更、他の誰かに食べられたくない。


密かに考え事をしながら働いていると時間を忘れる。
まかないの皿を渡されたところで、初めて昼休みだと知らされた。
湯気を立てるパスタを受け取ると慌てて店の裏へと引っ込む。

「朝ぶりだね。」
「……どうも。」

シフトが同じなら休憩も同じ。
一足先、フォークを咥えていた鞍吉と顔を合わせた。

休憩時間は交代で取るので今は二人きり。
朝食の後で肉まんも平らげたものだから、それほど空腹感は無いものの。
それでも美味そうな匂いの皿を前にすれば胃に空きも出来る。
ゆっくり手を進めていると、ふと鞍吉が口を開いた。

「なぁ、肉まんのお返しで菓子作るけど……お前、何が良い?」

和磨も食べたかったのだし、別に礼をされる程でもないけど。
折角の申し出に断る理由も無し。

「えっ、じゃあシュークリーム!カスタード大好きなんだよねぇ。」
「……少しは遠慮しろよ、建前だけでも。」
「いやぁ、舞い上がっちゃって。だって鞍君のお菓子食べたいもん僕。」
「ん……じゃ、旬だしな……苺も入れとく。三人分用意しとくから。」

即答に面食らったような、照れたような。
肉まんが好きなのは知っていたが、此処まで効果があったとなれば嬉しい。
あの時、暖まったのは身体だけではないと見た。


ふわふわして、あったかい。
そう聞いて笑ってしまった本当の理由を、和磨は黙っておいた。

鞍吉にとっての釈七の存在そのものじゃないか、其れは。

暖かい食べ物は、凍えている者にこそ口にして欲しいと望む。
其処に小難しい理屈なんて無いのに。
愛情とはそう云うもの。
まだ迷いのある鞍吉が手を伸ばせなくても、きっと大丈夫だろう。
釈七は温度を保ったまま待っているようだし。


愛情を食べ物に例えるなら、チョコレートは双子の方。
ただし響きと違って甘くない。
あの二人は、それこそブランデーが効いたビター。

舌先で苦いココアパウダーが溶けても手強い味。
酔いそうな強い香りに噎せそうになり、喉の奥が灼けてしまう。
好んで食べ続ける和磨はすっかり慣らされてしまった。
儚い甘味をしっかり感じて、「美味しい」と微笑む事も出来る。

表面だけでも冷たくないと自己が保てないのだ。
解かっているから、無理に暖かい場所へ引き摺り出したりしない。
熱で包むのは、口に含むただ一人だけで充分。


「……つーか、旬だったらチョコの方が良かったか?」
「いや、苦いの味わうのは僕一人だけで充分だよ。」

苦味は和磨の物、双子と分け合うのなら甘味だけで良いのだ。
こんな返答じゃ意味は鞍吉に通じない。
訝しんで首を傾げられても、飄然とした笑みで秘密にしたまま。

***

お待たせしちゃってすみませーん!
肉まんの件聞いて、これって釈七さんの事じゃ…と思わずにいられず(笑)。
またちょっと鞍君と和磨が仲良くなれたら良いな(´ω`*)





        
 
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