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燦然世界の赤い星(鞍吉+和磨)

鞍君が釈七先輩にバッグチャーム作ると決意したところで…
私からも文章で続けてみました!
うちの和磨も双子君と恋仲なのですが「キミホシ」とは少し設定が変わってくるし
いらっしゃった方々は双子×和磨の関係性を知らないので、ざっくりですがご説明を。

***

巽 和磨(タツミ カズマ)
18歳の高校2年生(1年遅れ)、182cm。
金茶の天パで緑のタレ目の日英クォーター。
嗜好や美意識が女性寄りで飄々とマイペース、手先は器用な方。

*初めて会った時から楔波君に惹かれるものの「興味が無い」と言われて片想い状態。
*紫亜君からは気に入られていて「三人でなら」の条件を持ち掛けられ、身体の関係を持つ。
*玩具扱いされながらも真っ直ぐ想い続けた末、楔波君は無自覚ながらも両想いに。
*双子君は一心同体なので、意味が違っても紫亜君とも想い合う仲。
*独占欲も見せるようになって「特別」で結ばれて、崩れないまま三人での関係。

鞍吉←年上だけど危なっかしくて子供扱い。
楔波←ご主人様(愛さずにいられない)。
紫亜←ご主人様(世界一可愛い)。

「キミホシ」とは番外に当たりますが、此方も楽しんでいただけたら幸いです。

***
売り場に燦然と華やぐのは、ビーズに天然石、金属パーツ。
愛らしい物から精巧な作りの物まで。
真っ白な照明の下、散らばった色彩が眼を奪う。
器用自慢が集まる手芸屋の一角。

服からアクセサリーまで材料が揃う店内は女性客ばかり。
そんな中、悠々と一人で過ごしているのがいつもの和磨なのだが。
今日だけはおっかなびっくりのお供を連れて。

「こっちだよ。」

長身の金茶から数歩下がって、丁度目の高さに紺藍色の頭。
興味深げに見回している様はまるで子供を思わせる。
瞳を輝かせて、幼さが隠し切れない鞍吉。


愛用のメッセンジャーバッグを背負った後姿は見慣れた物。
ごく最近、一点の洒落っ気が増えた。
淡い青に光るラブラドライトと金色カラス。
和磨が贈ったチャームは鞍吉のイメージで作ってみた完全一点物。
早速付けてくれている辺り、作った甲斐があると頬を緩めた。

何がどんな切っ掛けになるやら分からないものだ。
共に足を踏み入れる事になった発端も、此れだと云うのだから。


釈七と恋仲になってから形の有無を問わず与えられてきた物。
鞍吉にとってそれは嬉しくもあれば、何かお返しをしたくなったらしい。
一度決めたら居ても立っても居られず。
和磨に頼み込んでまで、恋人に贈るバッグチャーム作りに至る。

「あれ、僕にはお返しで作ってくんないの?」
「俺からはドーナツやっただろ……何だよ、不満みたいに……」

なんて口にしてみたものの、そもそも贈り物なんて無償。
相手に貰って欲しいだけなのだ。
ご褒美は喜ぶ顔で充分、それは釈七の方も同じだろうけれど。
彼だけには鞍吉も一生懸命な気遣い。


さて、作り方なんて云ってもどうしたものか。
パーツの扱いに慣れた手からすれば、選んで繋げただけのつもり。
特に凝った部分がある訳でも無し。

アクセサリーは技術よりもセンス勝負が大きい。
それなら最初に決めなくてはいけない物は、何をメインに置くか。

「此れ……、何か、晃っぽい。」

無数の種類が揃った天然石のコーナー。
鞍吉がそっと触れたのは、落ち着いたワイン色のガーネット。

本来、それぞれ力を秘めた石は意味を持つ。
人肌の熱を感じさせる紅色のガーネットは、深い愛情。
釈七を重ね合わせたのは恋人だからこそか。
思わず和磨が含み笑いを零したが、石を片手に考え込む鞍吉は知らず。
やがて、ワイン色から連想してデザインを思い付く。

「なぁ、小さくて丸いの沢山付けて葡萄作れねぇかな?」
「良いねぇ、ちょっと難しいかもしれないけど頑張ってみよっか。」

イメージとは人によっても変わる物である。
和磨から見た釈七は、紳士的な頼もしさを持つスモーキークォーツ。
名前の通り、煙った茶褐色に透ける水晶。
そう鞍吉に伝えたら「じゃあ其れも」と買い物トレイに加わった。


それから、と色々見ながらああでもないこうでもないと悩む姿。
メインの部分が決まってもどう飾るか。
まして、初心者の鞍吉には頭を抱えてしまいそうな難題かもしれない。

せめて例を見せてあげたら少しは参考にもなるだろう。
過去作品の写メならフォルダ内に幾らでもある。
良さそうな物は無いかと和磨が探していたところ、ふと気付いた視線。
携帯やバッグに向けられた鞍吉の目は怪訝。

「あれ、和磨って……、自分で作ったモン付けねぇの?」

問い掛けの返事は、頷き一つ。
和磨が飾りとして愛用しているのは冷たい石ではなかった。
ウサギにクマに犬に、と小さなぬいぐるみ。
どれもこれもバイト先の雑貨屋で出会ってから連れ歩いている子。

チャームは持ち手になる時の取っ掛かり代わりでもあるのだ。
ふわふわした物の方が良い、と云うのが一つ目の理由。
それから、他に挙げるとしたら。

「"作りたい"と"欲しい"は別の欲望なんだよ。」

正直、和磨が愉しいのは作る過程までの場合が多い。
完成した途端にあまり興味が無くなるのだ。
大半は他人に譲ってしまい、手元に置く物なんて気に入った一部のみ。


「じゃあさ……、あいつらには、何かやった?」

続く鞍吉の問い掛けは、何処か恐る恐るの響きを伴って。
和磨の心音が一つ跳ねる。
わざわざ名前なんて挙げる必要無かった。

其処から鮮明に浮かぶ者なんて、冷たい金色の眼だけ。


和磨と楔波と紫亜、三人での関係は鞍吉にも知られている。
基本的には隠しているだけに、こうして指摘されると妙に反応してしまう。

双子の所有物になる形なので二股ではないのだが。
ペットとして共に居る和磨は、気紛れな飼い主達に振り回されっぱなし。
実際、全力で感情を使って向き合う毎日。
「大変そう」と鞍吉に言われても肯定しか出来ず。

それはそうと、双子に何か作ってあげる事なら以前から考えている。
ただ、思い入れが強過ぎるだけにいまいち形にならず。
デザインはインスピレーション次第。
どんなに悩んでも纏まらない時はどうにもならない。
第一、絶対に贈りたい、と云う訳でもないので保留のまま。


「喜ぶと思うけどな……」
「鞍君とことは違うよ、その指輪みたいにはいかないって。」
「ちょ……っ、何言い出すんだよ……!」
「え、だって……、ねぇ?」

鞍吉はあまりアクセサリー類を着けない。
事前にそう聞いていたからこそバッグチャームにしたのだ。
そんな手に指輪なんて、贈り主も嵌める場所も一つしかないだろう。

鞍吉にとって幸福の象徴だと云うのは解かる。
プリンを作って貰って、指輪を贈られて。
第三者の和磨は微笑ましく思っても、其処に羨望は無い。
自分が其の立場だったら、とは想像出来ないのだ。

他所は他所、家は家。

確かに、包み込まれて守られたら安心するだろう。
けれど此の「大変」な現状には望んで身を置いているのだ。
3個で1つの安いプリンを分け合う時や、戯れで首輪を施される時。
和磨の幸福は其処にある。
他の誰から何と言われようとも、思われようとも。

相手が傍に居なくても、手に触れていると感じる物が指輪だとしたら。
秘め事の際に、普段隠している面を相手に曝け出す物が首輪。
形の違い、ただそれだけ。
鞍吉も和磨も「特別」として愛されている事は変わらない。


「釈七さんを幸せに出来るの鞍君だけで、あの双子を手に負えるの僕だけ、て事。」
「そうだと、良いんだけどな……俺いまいち自信無ぇし……」

弱気に呟いて背中を丸めても、会計が済んだら伸ばさねばならない。
製作の材料は揃って袋の中。
鞍吉をせっついて、今から向かう先は和磨が働く雑貨屋。

互いの家では相手がいつ帰ってくるか分からず落ち着かない。
椅子とテーブルのある更衣室を使う許可なら了承済み。
男子が少ないので出入りも滅多に無く、暖房もあるのでそこそこ快適。
いい加減、和磨も道具や基本パーツを詰めたバッグが重くなってきた頃合。

「あ、作りながらで良いから指輪の話聞かせてくれる?」
「聞きたいのかよ……」

鞍吉が不器用な方だと知っているので、教えるには根気が要るかもしれない。
此れくらいの報酬は貰っても構わないだろう。
苦労しそうな予感を覚えながら、溜息の代わりに愉しい気分が零れた。
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== Comment ==

繋ぐ果実と誓いの雫
思いつきは、迂闊に口にするもんじゃない。

ずらりと並べられた、指先よりも小さなパーツを眺めつつ、鞍吉は思う。
必死に選んだとしても、金銭で購入できるものでは不十分。
自らの手間と時間をかけたものを贈りたい…その手段を知っている和磨を羨んだのは事実だ。

しかし。

「………違うって。それの持ち方はこう。これをこうして…」
材料を仕入れた店での、いたたまれなさを思い出す。
……矢張りこれは、女の趣味だ。手芸店は女性客ばかりだったではないか。
細く華奢な針金パーツの、何本目かを無駄にしながら鞍吉はつくづく思い知る。
男の力では、加減が難しく簡単にひしゃげてしまうものばかり。

とはいえ、指南役である和磨はそんなことは意に介さず。
細くすんなりはしているものの、体格に見合ったなりに長い指をめまぐるしく動かしては、小さな部品を次々と変化させてゆく。

ラジオペンチなら配線工のバイトで扱ったことはあれど、それに似た形のフライヤーは初めて見る物。菜箸のような先端を利用して円を模る。それさえも、手慣れた和磨が持てば、まるで魔法の道具のようだ。

「……何言ってるのさ、鞍君だってお菓子は作るでしょ?クリームのコルネも、優しく絞らなきゃ細いラインは描けないし。この間のハロウィンクッキーじゃないけどさ」
それはそうだが、改めてこの年下の相手に指摘されると無性に腹が立つ。

……そういや、晃が初めてコルネで皿に絵を描いたときも、魔法のように見えたっけ。

ふとそんなことを思い出し、手を止める。
…手間と時間をかけて、こうして作った物を贈れば、自分は安心できるのだろうか。
目に見える形で、繫ぎ止めておきたい。ひとつひとつの小さな部品を繋げて、鎖状にしていくように、相手を想う証を積み上げていきたい。
…だが。どんなにキラキラと輝く、存在感のあるパーツを繋いでも、気付けば無くしてしまいそうになる不安は何か。
様々な色や形の、ビーズやモチーフを繋いでいるのは、結局のところこんな華奢な針金ではないのだろうかと。
いつか千切れて失ってしまいそうで、何度も何度も目視してしまう。
…そんなものなんじゃないかと。

素材を選びながら、和磨に問うたこと。
和磨は、「あいつら」には何も贈っていないという。
双子と和磨の関係は、鞍吉も知っている。知った時は盛大に驚いたものだ。
楔波はかつての鞍吉なんてものではない程に他人との関わりを疎むし、紫亜は逆に、鞍吉も含め誰彼構わず馴れ馴れしい。
全く感情の見えない二人…だからこそ、何故和磨が彼等のことでこうも頬を赤らめるのかを不思議に思う。

関係を知ってはいても、和磨は「振り回されてる」だの「ペットの様」だの表現するので、詳細はよく分からない。何となくだが、突っ込んで訊くのも憚られるような気がする。
…そもそも同性同士、言いづらいのはお互い様、ではあるが。

ただ、漠然と大変だろうなと思うだけだ。
とはいえ…鞍吉にとって、対峙した彼等の印象は「得体が知れない」だけではない。
容赦ない言動ではありつつも、的確に鞍吉の弱さを打破してくる紫亜。
そして、「面倒」だと零しながらも心落ち着けたいならと、自らも好きだという綺麗な空を見せてくれる楔波…。

もしかしたら、自分には思いも寄らぬ心の繋がりがあるのかも知れない。
そしてそれは、或いは自分と愛しい「筈」の相手との繋がりよりも…もっともっと頑丈で、壊れにくいものなのかも知れない。
こんな風に…「形で露わそう」とする必要が無い程に。

「………どうしたの?繋ぎ方が判らない?」
怪訝な顔で、和磨が手元を覗き込む。先刻から殆ど動いていない。
「…あ、あぁ、いや…」
「そんな神妙な顔してないでよ。パワーストーンっていうくらいだし、石は贈りびとの思いを受け止めるんだよ?辛そうな顔して作ったら、折角の綺麗な赤も濁っちゃうよ」
くすくすと苦笑しながら、和磨が言う。

釈七のイメージを重ねて、選んだガーネット。髪色の赤も印象として浮かんだが、静かに秘めつつ隠せない熱情…そして、きっと自分の赤味を帯びた瞳に映る彼の姿。
モチーフを葡萄にしたのは、その色目と、果物を様々に駆使して菓子を作る姿を脳裏に映して、のことだが。

「………赤ワイン」
「え?何??」

葡萄と言えばワインだ。
一人で飲む酒は、ビールや焼酎ばかりだった。

高校を出て、初めて働いたフランス料理店。コネで就職したものの、当然調理師免許は後回しの下っ端、仕事は皮剥きと皿洗いのみではあったが。
そこで垣間見たソムリエの手腕。麗しい曲線のグラスに注がれ、波打つ深い赤。
上品な音を立て、乾杯し、談笑しながら杯を傾ける客。
…そんな様子を見ていたからだろう、ワインは一人で飲むものではない、と思った。

酔う為に、何もかも忘れてただ眠る為にと初めて口にしたアルコールは、皮肉なことに鞍吉の意識を壊してはくれなかった。
そんなところばかり、無駄に抵抗力が強かった。
それでも通常よりも深く落ちればと、摂取量だけが増え…結果的に、尚更酒に強くなってしまった。
…だから、鞍吉には酒の味など良く分からない。

そんな彼は、いま周囲から「ワイン好き」だと思われている。
曲線を伝い落ちる赤い雫、ガラスの半円に仄暗く澱む液体も、光にかざせば紅玉の輝きを透かせる。
…味など区別が付かない。ただ、綺麗だったのだ。
元々、ガラス食器などを偏愛する鞍吉にとって、グラスとその機能を充分に発揮するワインの組み合わせは、ひたすら美しく目を奪うものだった。

………漸く葡萄の房らしき形態になりつつあるガーネットは、その赤ワインをも思わせた。

「………俺、ワイン初めて飲んだの何時だったっけ…」
無論和磨がそれを知る由は無いし、何より未成年に振る話では無い。
「…そっか、葡萄と言えばワイン、だもんね」
ところがこの飄々とした十八歳は、訳知り顔で頷いてみせる。
「聖なる血…だね。キリストが自らの血と称して、最後の晩餐で使徒達に分け与えた…。日本でも「固めの杯」なんて風習があるけど、西洋でのワインも、聖餐式とか…元々はそういう「契り」の儀式に使われるものだったらしいよ?」
三三九度を揶揄してか、和磨が含み笑いを洩らす。
「………詳しいな」
「イギリスだったら既に飲酒できる歳だからね、僕」

初めて飲んだのが何時だったか、は覚えていない。
しかしなんにせよ、「一人で」ではなかった。
特別な日の、特別な酒。互いに向かい合って、談笑しながら傾ける杯。
………今、自分が身を置くあのマンションの一室には、少し奮発して買った美しい曲線を持つグラスが二つ置いてある…。

「…で」
残り幾つかの飾りをつければ完成、という頃合いになって、和磨が口を開く。
「聴かせてくれるんでしょ?指輪の話」
「…………あー」
作りながら、とは言ったものの、慣れない細かい作業は会話などする猶予も与えていなかった。
利き手にあると何かと不便だからと、戯れに左手に移っていた銀の環。
………そうだ、これもまた「契約」。
「…ただのクリスマスプレゼントだよ。…別に他には面白い話なんてねぇし」
「そう?そんな風には見えないけど」
新緑のような碧い目は、妙なところで察しが良い。
…とはいえ、誤解の末のすったもんだを改めて話すなど、みっともないにも程がある。

分け合う聖なる血のワイン、誓いの薬指。
偶然とは言え、よくもここまで揃ったものだ。
期せずして並べられた、「形式」。
…多分…それもまた力加減を間違えれば簡単に切れてしまうモチーフの繋がり。

上目遣いで、鞍吉は和磨の顔を窺う。
再び和磨と、「あいつら」のことが頭を掠める。
…彼等には…どんなモチーフがあるのだろう。
そしてそれらは、どんな風にして繋がれているのだろう。
無くしてしまう心配を、和磨も常にしているのだろうか。
それとも…

「必要が無いから、存在もしない」のか…。

好奇心はあるが、訊くことは出来ない。
分かりやすい「形式」に囲まれた自分を、和磨は幸せだと思っているだろう。
けれど、鞍吉にとっては明瞭な「形」ではなくても、それをそれとして受け止めている和磨の方が余程幸福に見える。
むしろ羨まれるべきは、自分の方かも知れないというのに。

房に垂れ下がった葡萄の一粒が、ほんの少し曇ったような気がした。
慌てて手で覆う。

「……鞍君?」
「あ!あ、ありがとな和磨…!な、なんとか形になった」
悟られてはならぬと、取り繕うように言葉を被せる。
それでも、聡い相手には伝わってしまっただろうか。

和磨はひとつ溜息を吐くと、ぽん、と小さく手を打った。
「そうだ、いいものあげる」
そう言い、店舗の方へ一旦姿を消し、再び戻る。

手にあったのは、小さなガラス製のトレイ、それからビニールに入ったガラスの破片のようなもの。
「インテリア用のだけど…水晶のさざれ石だよ。水晶にはね、浄化能力があるっていわれてる。釈七さんにそれあげる前に、僕が鞍君にあげたのと…そうだな、その指輪も一緒に、一晩この上で休ませてあげるといいよ」
やはり、気付かれてしまったか。心情が隠しきれない自分を鞍吉は恨む。
「……石や鉱物は、自然のものだからね、ちゃんと生きてる。想いがあれば、決して持ち主から離れたりはしない」

せせらぎにも似たさざれ石は、確かにどんな濁りも濯いでくれそうに見えた。
無色透明の欠片が、鞍吉の、和磨の想いを乱反射する。
不安や諦念や嫉妬…総て洗い流して、本来の輝きを取り戻す、何度でも。
澱んだ暗色に沈んだ蒼、血潮の情熱を秘めた深い紅、そして金色の光に憧れた新緑の碧…
いちばん綺麗な色を、纏い続けられるように。

「…悪ぃな、色々…」
「いいって。…うん、そうだな、今度のお礼はドーナツじゃ済まないね」
「え!…な、なんだよ、出来る事ならするけど…」
尻込みした鞍吉をよそに、和磨はいつもの飄々とした笑顔で答える。
「今度こそ指輪の話、詳しく聞かせて欲しいな。ケーキとお茶付きで」
相変わらず、どこまで本気か分からない。
が…その時は、今より少し澄んだ光を発していられればいいな、と思う。

水晶のように冷たく澄んだ空気が、天上の宝石達を輝かせる季節が、すぐそこまで来ていた。

***

折角なのでもうちょっと和磨君との会話を続けてみようと思ったら…なんか偉い長くなっt←

モチーフを折角葡萄にしていただいたので、ボジョレーネタ代わりにワインの話も書きたくなってしまい;

鞍の和磨君と双子君に対する感情も、ちょっと見えたらいいなと思いました!

なんか色々すみません!釈七さんチャームもピアスも、ほんと嬉しくて小躍りしてますw
いつも素敵なお話をありがとうございますー!(*´▽`*)
傷に似合う光
そう云えば、カフェでもそろそろクリスマスケーキのビラが配られる頃。
また今年もホールの助っ人として駆り出されるのだろう。
ケーキとお茶を楽しむついで、衣装や日程の話もしておく必要があるか。

それはさておき、今日のところは和磨がご馳走する方。
休憩所も兼ねている更衣室には、使用自由の電気ポットが備え付けてある。
紅茶の缶を開けると、林檎の香り。
マグカップ2つにティーバッグを落として湯を注ぐ。
柔らかな蒸気が立ち込めて、もっと強い香りが部屋を甘くした。

「あ……、美味い。」
「でしょ?」

渋みを抑えた後味は鞍吉にも気に入ってもらえたらしい。
ブレンドされたバニラが生きている。
ワインが好きなら、ホットワインティーにしてもお勧め。
小鍋にアップルティーを沸かし、ワイン、砂糖、レモンを加えて軽く煮る。
身体を温めてくれる一杯になるだろう。

「と云う訳で鞍君、良ければお家で試してね。お店にも置いてるから。」
「店の裏でまで営業すんなよ……」

カップを支える指先から、紅茶が流れ込む腹の中まで熱っぽくなる。
これから寒い外を歩く準備の為に。
更衣室の窓は小さめでも空の色なら読める。
すっかり陽が落ちるのが早くなって、落ち葉を散らかす冷たい風。


「……鞍君はさ、空好き?」

刻一刻と濃くなる群青。
ふと視線を移して、問い掛けてみた。

「何だよ突然……そりゃ、まぁ好きだけど……」
「そっか……、僕は、全然。」

普通なら「僕も好き」の返事だけに、鞍吉に怪訝な顔をされてしまった。
けれど事実だ、寧ろ嫌いな部類に括られる。
髪も肌も目も色素が薄い和磨は、昔から青い空に苦労させられてきた。
高い所なんて怖くてもっと大嫌い。

何より、空ばかり眺める楔波は此方を見てくれなくなる。

綺麗に晴れた日、いつも三人揃って少しばかり口数が減る。
こうして共有する時間の静寂は穏やかでもあれば、密かに上がる心拍数。
構ってくれなくても楔波ばかり盗み見ていた。

「でもね、離れてる時でも空が綺麗だと「今、何処かで見上げてるんだろうな」って
 思えて何となく安心出来るから……やっぱり、嫌いではないかな。」

お互い何処に居たって空は繋がっている。
片時も離れず一緒でなくたって、不変の物があるなら良いじゃないか。
世界が滅亡でもしない限り無くなったりしない。


「何だよ、そうやって繋がってるのって凄く幸せだろ和磨……」
「まぁ、そりゃ僕だって持ち歩ける物も欲しいけどね。」

双子に何か贈ったか、と鞍吉に問われてから和磨も思い返してみれば。
そうだ、今まで気付かなかった。
此の関係にはプレゼントの習慣が無い事に。

「は?だって……クリスマスとか誕生日とかあるだろ?」
「いや、ケーキ食べるだけだよ?そーいや僕、誕生日も教えてないし。」

戯れで甘い物を肌に落とされ、舐め取りながら衣服も剥がされる。
そうして蕩かされる事がお祝い。

双子と交わす物はことごとく形が無い。
体温、言葉、感情、時間。
後に残せなくても、一つずつ胸の中で大切にしていれば消えない。

最初のクリスマス、黒と紫の弁当箱は贈ったものの。
数日前に「お前の作った飯が食ってみたい」と言われての選択。
必要だったから用意しただけの物であり、それに中身を詰める時は和磨の手元。
もし突然、壊れたり失くしたりしたら?
確かに惜しい気持ちにはなるだろうけど、また新しく買えば済んでしまう話。

何より大切なのは、同じ物を一緒に食べると云う点なのだ。
特別な日も何も無い日も。

ただ一つ、贈られた物があるとしたら3本揃ったスプーン。
持ち手に嵌め込まれた緑のガラスが可愛らしい。
和磨の瞳に似ていると、楔波が気に入って購入してきた。
そう言われて嬉しそうに真っ赤になった理由は、多分きっと伝わらない。

以来ずっと、コーヒーを飲む時や甘い物を分け合う時のお供。
大切な時間を過ごす為に必要なアイテム。


それに、物欲が無い相手への贈り物は難しい。
自由に使える金銭があったらどうしたいか、と訊いた事がある。
その時も楔波は「何でも良い、お前にやる」の返答。
紫亜からは「アダルトグッズで和磨を困らせたい」と微笑まれてしまった。
どちらにしても自分の為には使わないらしい。

バッグチャームなんてあげても一番意味が無いだろう。
何処へ行くにも手ぶらで気分次第なのだ。
自由な足取りの双子に、鞄は重くて邪魔でしかない。

どんなに身軽でも一つだけ装飾品は欠かさないけれど。
片耳に、瞳と同じ金色のピアス。
それなら和磨も作れるが、穴の数は決まっているのだ。
今身に付けている物を外してくれと言う意味になってしまい、何か違う。

それならば?


「あ……っ!」
「何だよ?」
「ん、ありがとね鞍君、お陰で欲しい物見つかった。」
「……お前が貰う方かよ。」

鞍吉は呆れたものの、無口になっていた点はそっとしておいてくれた。
考え事ばかりしていたのは先程まで同じ。
口の中で「変な奴」と呟いて、アップルティーを啜る。

聞こえてはいるけれど言われ慣れてもいるのだ。
和磨に傷は付かず、寧ろ機嫌良く笑った。


近いうちにピアスを開けようと思う。

そうして穴が固定したら、双子に選んで貰った物を身に付けたい。
彼らの「所有物」である証として。
耳が隠れる髪型なので、他人の目に触れる事は少なくても。

「ペット扱い」とはこう云う意味だ。
普段、全裸に首輪で啼かされているなんて鞍吉には言えやしない。
服従を誓ったのも和磨自ら。
感情の見えない双子が、実は強い独占欲を持っていると知っているから。

恋をしてから、どんどん変わっていく実感。
今までと違う自分が見てみたい。

相手の存在は、小さくても此の身を光らせてくれるのだろう。
出来上がったばかりのバッグチャームと鞍吉の指輪。
それらがあんなに輝いて見えるのは、想いがあるからこそ。

***

ノロケばかりになってしまってすみません、お待たせしまして!
目の前の幸福を見て、自分の幸福も改めて考える…そんな感じで。





        
 
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