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== 永桃学園日誌 ==

召しませ魔球(舞美+浩気)

設定は此方から

舞美先生は電王大好きです。


昼間は随分と暖かくなっても日が暮れた春はまだ冷たい。
ベランダは夜を愛でる特等席と云えた。
届きそうな距離に咲き始めの桜。
冴えた月光で濡れた花弁が零れ、軽やかに舞い踊る。

先程まで隣で続いていた喧騒は止んで、今は沈黙。
凛と澄んだ風の中、見上げた空一杯に散らばった星屑が輝くのみ。

「ゼロライナーでも降りて来そうね。」

ガラス戸を開けて呟いた言葉は恍惚と。
ある意味ロマンチックと云えなくもないが方向性が違う、確実に。
一人で星を愉しむ舞美にとってはそんな事などお構い無し。
羽織ったカーディガンの襟を正して、甘く溜息一つ。


「ん?」
「あら?」


上ばかり見ていたので認識するのが少し遅れた。
視界の端で不意に感じた気配、横を向いてみれば目線が交差。
隣のベランダには大きな影。
丁度、舞美と同じようにゆるりと手摺に凭れている浩気が居た。

姿を確認してから思わず眼鏡を掛け直してしまった。
見間違いなどではない。
緩い部屋着の上から身に付けているのはデネブエプロン。

嗚呼、なんて良いタイミングなのだろうか。
鼻血が伝ったのは、此の際気に留めず。

「こんばんはー、志保谷先生も夜桜見物みたいですね。」
「ええ。其方は随分と賑やかでしたけど、皆さんとご一緒で?」
「それね……、あの、話聞いてくれますか。」
「……どうぞ。」

会話は少しばかり上半身を乗り出しながら。
お互い漸く顔が確認出来る位置。
胸元まで高さがあるので手摺から落ちる心配など早々無い。


「何人かで呑んでたんですけど、俺がお酌とか肴作ったりしなきゃなんなくて……」
「ああ、それでエプロンしていたのね。」
「遠雷先生めっちゃ食べるんだもん、夕飯終わった後なのにッ!」
「呑めもしない上に損な役割ですか……大変ね……」
「俺的には居酒屋の店員になった気分、だったけど、皆には奥さんて呼ばれまくりで。」
「そこは普段からですよね?」

しかも相手が複数の酔っ払いでは勝ち目無し。
広い背中が受ける灯り、向こう側は既に死屍累々の有様かもしれない。
そして其の惨状を片付けるのは間違いなく浩気である。
彼の苦労を考えたところで、不意に気付いた。

「乳ヶ崎先生、若しかしてキャンディー食べてる……?」

よく聞くともごもごと篭もった口調。
疲れた横顔を見てみれば、片頬が膨んでぷっくり丸い。
多分、きっと、中身は虹の味。

「うん、俺やっぱ酒より甘い物の方が良いし。志保谷先生も食べる?」
「え、でも此の距離じゃ、」
「此処から投げれば何とか届く、かも。」
「でしたら、絶対に取れる呪文があるので……、言いながらお願いします。」

待ったを掛ける舞美は有無を言わせない気迫。
首を傾げた浩気には、眼鏡の奥に隠れた表情など読み取れない。



「最初に言っておく……、侑斗を宜しく!」


“呪文”と共に打ち出される飴の包み、浩気の拳が大きく振り被った。
桜の降る夜の中を描く放物線。
落下した先、寸分も狂い無く舞美の手に。

「ありがとうございます、しっかり呪文は効いたわ。」
「えと、あの、ティッシュもあげた方が良かった……?」

表情も口調も凛々しさを保っていても、ベランダの床には点々と深紅。
降雨量は桜を上回るかもしれない。
大事そうに胸へ抱いて、舞美は満足げ。
嬉しい理由など彼女にしか解らないだろうけれど。

「侑斗ってコレ、だよね……俺そんなに似てる?」

指差す先は例のエプロンのキャラクター。
浩気が放った疑問に対し、舞美の頷きは力強い。

「ええ、もう、外見は流石に違いますけど性格とか……」
「そっかぁ、似てる似てるって言われてたら何だか俺も気になっててさ。」
「電王ご存知ないのでしたっけ、なら今度DVD貸してあげます!」
「あ、良いの?特撮かー、小さい頃以来だから何年ぶりだろ。」
「私達そう云えば同い年でしたよね、乳ヶ崎先生は何観てました?」
「ん?俺はねー……、」


緩やかに投げ合う言葉は途切れる気配無し。

届かなくても、受け取れなくても、飛んだ方へ追ってまた返す。
違う場所に立ったまま、キャッチボールはまだまだ続行中。
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