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== 梅染街 ==

マグカップにも雪は降る(楔波×和磨×紫亜)

*同性愛描写(♂×♂)
ホワイトデーも書いてみました。
同じネタではありますが、楔波君にもしてほしかったので(笑)。


此の家でマグカップが並ぶと、湯気を立てるのはコーヒーである。
夕飯も風呂も済んで一息の時間。
濡れた髪を弄った所為で冷えた指先が、熱に痺れる。

和磨にとっては、三人で住むまで馴染みの薄い物だった。
どちらかと云えば紅茶派だった事を思い出す。
甘い物に慣れ親しんだ舌には砂糖が無くては手強い。
そこは変わらなくとも、好んで飲むようになったのは大きな変化。

何もコーヒーそのものだけの話でなく。
良い香りで穏やかに解けた空気。
普段振り回されてばかりなだけに、双子と共有出来る事が嬉しい。


「和磨のコーヒーだけ白いのさね。」

表面が真白で埋まったカップを覗き込む金色。
こう云う時、紫亜は本当に目敏い。
赤い爪に摘まれた緑のスプーンが、悪戯に渦を描く。
例のスプーンはコーヒーの時間にも便利。

掬い上げると、熱で崩れた木目細かな泡の塊。
真白の正体は浮かべたマシュマロ。
溶けかけが一番食べ頃。

「美味しい?」
「うん、砂糖無くても飲み易いよ。それに……」

頷いた後、移した視線は紫亜からテーブルの上へ。
ギフト用の大きな紙袋。
膨れ上がる程に一杯な中身は、全てマシュマロの包み。

「少しでも食べて減らさないとね、此れ。」

バニラ、苺、チョコ、レモン、紅茶までフレーバーも様々。
改めて見詰め、溜息混じりで和磨が笑う。

時は3月14日、ホワイトデー。


チョコレートプリンをコーヒーに添えたのは、一ヶ月前の話。
とても甘い気分のまま更けた夜。
お返ししなきゃね、と紫亜が口にしたのも覚えている。

しかし、行動の読めない双子が相手。
和磨が大人しく待っていると、やはり予想外の事になった。

バイトから帰って、ただいまを言い掛けた口。
早々にマシュマロ一粒で塞がれた。
紫亜が纏わり付いてくるのはいつもだが、今日は特別な出迎え。
そして、部屋の奥にお菓子の山。
向かい合った時、和磨は驚くやら可笑しいやら。


「ホワイトデーフェアでいっぱいあったし、面白いから全種類買ってきたさね。」
「俺ら二人分やしな。お前、どれがえぇんか解からんし。」
「こんなにどっさりあると圧倒されるね……まぁ、お菓子なら長持ちするけど。」
「何や、食べ切れないなら他所に配るか?」
「それは駄目だよ、僕が貰ったんだから……ちゃんと食べるもん。」
「和磨、本当に欲張りさね。そんなに好き?」

含み笑いの微風が、飲み掛けのコーヒーに波紋を描く。
紫亜が指すのはマシュマロの事じゃない。

此れはお菓子よりも気持ちの問題。
双子から貰った物だから、今更誰かに渡したくない。
そうした和磨の心情を解かっている上の言葉。


「和磨、俺も減らすの手伝うから食べさせて?」
「えっ?う、うん……」

曖昧に頷いて、玄関先で紫亜に食べさせられた事を思い出す。
お返しと云う訳なら拒否出来ない。
逆らったりする気なんて元から無いのに。

一粒摘んで差し出しても、すぐには食い付かなかった。
和磨の手首に冷たい指が巻き付き、柔らかな捕獲。
引き込める事を許さない。
そうして、赤い舌でマシュマロを絡め取る。

至近距離で眼の合った一瞬。
細められた金色は、翠に微笑む。

「ん、甘いさね。」

味わって舌舐め擦りする紫亜を、和磨は直視出来ず熱くなる。
苛められる事なら日常なのに。
こうして甘い空気になる方が、何となく気恥ずかしい。

残りのコーヒーでも飲んで落ち着こう。
そのつもりでカップに伸ばした手が、途中で捕われた。


「俺には?」

和磨に触れる大きな手と、静かなまま刺す金色の眼。
至って当然のように問い掛けたのは、楔波。
此れはマシュマロの山よりも予想外。

「……えっ?!」
「何や、俺そんな変な事言うたか?」

真顔でからかっているのか、それとも本当に解からないのか。
相変わらず感情が読み取れない。
どちらの可能性も充分に有り得るので、尚更に。

こうして楔波から強請られるなんて思わなかった。
けれど、確かに時折ある。
紫亜に絡まれた後、嫉妬を感じさせる素振りを見せるのだ。
それだって気の所為か否か誰も知らないが。
何にせよ、和磨を掻き乱すのは事実。


強く引き寄せられたら、倒れ込む形で向かい合わせ。
膝の上へ和磨を座らせる。
ますます困惑して赤くなるのも構わずに。

「早くしぃや。」

冷たい金色の眼は、睨み付けられれば刃物よりも鋭くなる。
要求の物がマシュマロであっても、脅迫めいた低音。
可笑しな事になったが和磨も腹を括る。

摘んだ真白を一粒、楔波の口許に触れてみた。
それを合図に開かれた唇。

「痛……ッ!」

指ごと齧り付かれて和磨に涙が混じる。
待たせたお仕置きだろうか。

口腔に含まれ、楔波の濡れた体温を感じる。
いつも舌で探っている場所。
爪先をくすぐる吐息に、背筋から痺れが駆け上がった。


「甘ったるい、けど美味いな。」
「そうだろうね……」

痛みで痺れる指を撫でながら、和磨が呟きを返す。
あのまま食べられるかと思った。
実際、今まで唇なら何度も噛み付かれているのだ。
そのたび血の味のキスに酔わされる。

「楔波が美味しいって言うの珍しいさね、おかわりあげたら?」

いつの間にか背中に張り付いた紫亜が囁き掛ける。
振り向かずとも、笑っているのが判る声。
和磨が感情のまま反応するなら何でも愉しいのだろう。

また指ごと食われるのだろうか。
再びマシュマロの袋を探ると、確実に上がる心拍数。

「今度はあんまり強く噛んじゃ駄目だからね。」
「あぁ、待った……もっと甘いやり方あるでしょ?」

何の事かと首を傾げる間も無し。
背後から伸ばされた赤い爪が、和磨の胸元に這わされる。
そうして、パーカーのジッパーを音高く鳴らした。


「ちょ、紫亜……っ!」

一息に下げられて、左右にだらしなく開かれたパーカー。
中に着ていたシャツも首元まで引っ張り上げられてしまった。
丸まった衣服が邪魔で巧く身動きが取れない。
和磨には何も出来ず、されるがまま。

眼前に現われた緑のスプーンの先には、マシュマロ。
カップに溶けていた物の残骸。
そうして漸く意味を理解した、否、思い出した。

剥き出しの平たい胸に、滑り落とされた真白。
いつぞや紫亜に施された遊び。


「この方が和磨も甘いの感じてたみたいだから、あの時。」
「そう、だけど……っ、楔波も、何か言ってよ……」
「……食って欲しいか?」

ゆっくりと素肌に這う泡は、腹まで届きそうな頃。
汗ばんだ甘さも匂い立たせながら。
今更、残すなんて言わせない。
早く食べて、と和磨の吐息が熱に震えた。



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