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== 永桃学園日誌 ==

シグナルが変わる瞬間(リリィ+深砂)

設定は此方から

話す切っ掛け(深砂が1年生時です)。


入り口の引き戸が勢いよく滑る音。
バタバタとした足が室内に駆け込む音。
立て付けの悪い薬棚が開けられる音。

別にクイズに答えている訳ではないけれど。


先程までは静まり返っていた、放課後の保健室。
衝立と布団を隔てても届く雑音は明確で、リリィの眠りを妨げる。
頭痛がするのでベッドを貸して貰っていたら此れだ。
とは云えど、正確には目を閉じていただけ。
薬が効いたらしく一休みしたらすっかり消え去ってしまった。

蜜枝が何か探し物でもしているのだろうか。
中を引っ掻き回す乱暴な音はなかなか治まらず、耳を突くばかり。
根負けして枕元のゴーグルに手を伸ばす。

「何してん?」
「ん?」

髪を直すのもそこそこ、起き上がってみれば予想外。
衝立の向こうには女生徒が一人。
肩先で揺れた髪と、指を咥える唇が赤い。

誰かと思えば寮で毎日のように見掛ける顔。
今まで其の程度の認識だったが、新入生の深砂である。

「あのな……、おにーさん寝たいんだから静かにしてくんねぇ?」
「人居たんだね、ゴメン、絆創膏が見つからなくって。」
「文屋先生居ないん?」
「不在のプレート掛かってたよ。」

如何やら眠っている間に出掛けてしまったらしい。
喋る為に口から離した深砂の中指の先から、じわりと滲む血が見えた。
染まった唇ごと舐め取ると、再び片手だけで探し始める。
こんな状態で手当てしようとしていたのだから、さぞ不自由だろう。
此れ以上五月蝿くされても困る。

「診してみ?」



何処に何があるか判らず、両手が使えても探索には少々苦労してしまった。
傷口は大きくないが深いらしく洗う流水にも深紅が混じる。
絆創膏では事足りそうもない。
それでも、心臓より高く上げているので止血の法則に従う気配。

「何してたん?」
「彫刻刃の蓋外そうとしたらスパッと。」
「あぁ、美術部なんか。」
「うん。右手で柄、左手の人差し指と親指で蓋……で、引っ張るでしょ?」
「……それから?」
「引っ込めるの忘れてたんだよね、コレ。」

要するに、剥き出しの刃が滑る延長線上に中指があった訳か。
ジェスチャーを交えての説明に思わず小さく笑う。
仕上げの包帯をきつめに巻き付けて完了。

「わー、どうもありがとございました。」
「ん、風呂入る時とか大変だなソレ。」
「大丈夫……、背中流してくれる男なら居るし。」
「……ああ、」

女子高生らしからぬ細い笑みと言葉。
そう云えば、と曖昧な相槌を返しながらも思い出す。
値引きしろと五月蝿い生徒はまた今年から増えて困っていたのだ。
お陰で水鉄砲の中身が減るのも早い。
そしてリリィが銃口を向けるうちの一人が、

「いつも苦労掛けちゃってるよね、そーいや。」
「……お前、男の趣味悪いぞ。」

手を合わせて軽く頭を下げられたのは当人の代わり。
色々な意味で目立つ”男”なので周知の事実。
あからさまな顰め面で返した言葉も、やはり苦い。

「ああ、うん、そーゆー台詞はもう言われ慣れちゃったよ。」
「そうなん?だろうな、俺はバイだけどアレだけは無しだわ。」
「へぇ、どっちもイケるんだ……あ、でも和磨君って可愛いよ。」
「ほほーう?」

飽くまでも軽口だったのだが笑っていたのは其処まで。
恍惚と深砂の表情が溶ける、刹那。

「そうだねぇ……食べちゃいたいくらい。」

月並みの筈の呟きの中でも、リリィが見逃す事はなかった。
吊り気味の瞳を潤ませた色の正体。
背筋で感じ取った物は決して気の所為にあらず。

其れは”恋”などと簡単に形容出来る程に甘くない。
彼自身も隠し持つ、“狂気”と呼ぶ物。


「お前さ、高い所好きか?」
「……平気だけど?」

踏み出されたのは始めの一歩。
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